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放課後、三年生の教室に一人で行き、ドキドキしながら梅谷先輩を呼び出してもらった。教室から出てきた、地味だけど人のよさそうな梅谷先輩は、私の顔を見て首をひねる。
「あの、君は……」
「あ、えっと、一年二組の花園と言います。突然すみません。椿会長に伝言を頼まれまして」
「会長から伝言?」
ああ、いい人に嘘をつくって胸が痛む。
「はい。梅谷先輩に、生徒会室に来て欲しいそうです」
梅谷先輩はさらに首をかしげた。
「生徒会室に? 今日はなんの会議もないはずだけど?」
やばい。この人、私のこと疑ってる? ぼうっとしているようで、意外と勘が鋭いのかも。背中にへんな汗が流れる。
「きゅ、急に話し合う議題ができたみたいです!」
「だったら優雅たちも呼ばなきゃ」
「い、いえっ、梅谷先輩だけで!」
梅谷先輩がじっと私の顔を見る。私は咄嗟に先輩の腕をつかんだ。
「とにかくっ、会長が呼んでるんです!」
私は嘘をつくのが、めちゃくちゃ下手だ。
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