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梅谷先輩の腕を引っ張って、廊下を急いだ。先輩はなにも言わずについてくるけど、完全に怪しんでいるのがわかる。
渡り廊下を渡り、階段を駆け上ると、生徒会室が見えてきた。ドアが少し開いていて、中から聞きなれた声がする。
「俺はあんたの、そういう上から目線なとこが、気に入らねぇんだよ!」
それは恋野くんの声だった。あまりにも迫真の演技だったので、私の心臓がびくっと震え、つかんでいた梅谷先輩の腕を離した。先輩はゆっくりとドアに近づき中をのぞきこむ。私もその後ろから、おそるおそる中を見た。
西日のあたる、狭い生徒会室の中で、恋野くんと椿会長が向き合って立っていた。恋野くんは会長のことをにらみつけていて、会長はかすかに唇を震わせている。
「おい、黙ってないで、なんとか言えよ」
恋野くんが会長の肩に手を伸ばし、壁に押し付けた。会長は青ざめた表情で、恋野くんの顔を見つめている。
うわ、あれ壁ドンだ。本当にやってる人、初めて見た。
私はドキドキしながら、梅谷先輩の顔を見上げる。先輩はただじっと、そこに立ち尽くしている。
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