第1話 猫神さまと運命の赤い糸

5/20

129人が本棚に入れています
本棚に追加
/185ページ
 私はスマホの画面を閉じ、古い石段に座ったまま息を吐く。  冷たい風がびゅうっと吹き、私の頭の上を覆っている大きな木々が、ざわざわと騒いだ。足元に積もっている枯葉は、ぐるぐると踊るように舞っている。  私はぼんやりと周りを見回した。  ここは家の近所の小さな神社。神社といっても、お賽銭箱も鈴も狛犬もない。入口にひっそりと小さな鳥居があって、その鳥居のおかげで、なんとかここが神社だってわかるくらい。  鳥居をくぐると突然うっそうとした森になり、森の一番奥に、手入れもされていない古びたお社がぽつんとある。  小さい頃、お父さんから「ここには猫の神さまが住んでいるんだよ」と聞いたことがあるけど、昼間でも薄暗いし、いつ通りかかってもひと気がない。  だからなんとなく気味が悪くて、普段は近づくことがなかった。そう、普段は。  だけど今日、私は学校を飛び出し、走りながらわんわん泣いてしまっていた。途中でやっと、周りの人たちの憐れむような視線に気づき、あわてて駆け込んだのがこの神社だったのだ。
/185ページ

最初のコメントを投稿しよう!

129人が本棚に入れています
本棚に追加