第3話 恋する生徒会長

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「はっ、ビビッて声も出ないわけ? じゃあ俺、このままあんたのこと襲っちゃおうかなぁ?」  恋野くんがふっと笑って、会長に顔を近づけた。  え、ちょっと待って、演技だよね? 本当に演技だよね?  私はあわてて梅谷先輩の腕をつかんだ。 「先輩! いいんですか! このままじゃ、会長が襲われてしまいますよ!」 「……大丈夫だよ」  先輩がぽつりと言って、ドアから離れた。  そんな……どうして? 「椿は強いから大丈夫だ」 「え?」  次の瞬間、部屋の中で「うわっ」と悲鳴のような声が上がった。急いで中をのぞくと、会長が柔道のような技で、恋野くんを投げ飛ばしたところだった。  恋野くんの体が椅子や机にぶつかり、床に投げ出される。 「いっ……てぇ……」 「ほらね」  恋野くんのうめき声と、梅谷先輩の乾いた声が同時に聞こえた。 「椿は強いんだ。誰にも頼らず、なんでもできる。僕なんかがいなくても大丈夫」  梅谷先輩は一瞬寂しそうに口元をゆるめたあと、私の顔をじっと見た。 「君、どこかで見たことがあると思ったら、大雅と一緒にランチしてる子だよね? どういう理由でこんなことをしてるのか知らないけど、僕たちをからかうのはやめてくれないかな?」  先輩がそう言って、私に背中を向ける。私はぎゅっと両手を握り、先輩の背中に叫ぶ。
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