第3話 恋する生徒会長

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「椿に謝れ」  梅谷先輩が低い声で恋野くんに言った。 「梅谷くん……」  会長が潤んだ目で、梅谷先輩の背中を見つめる。 「今の発言は間違ってる。撤回しろ」 「は?」 「椿は強いけど、かわいくないわけじゃない。だから撤回しろ!」  眉をひそめた恋野くんに向かって、梅谷先輩が細い手を振り上げる。だけどその手は簡単に、恋野くんにつかまれてしまった。 「紅子!」  恋野くんが私を見た。私ははっとしてそこへ駆け寄る。そして素早く会長の指にぶら下がっている糸をすくい上げると、恋野くんがつかんでいる梅谷先輩の指にそれを結び付けた。 「やめて!」  会長の泣きそうな声が後ろから響く。梅谷先輩が息をのんで腕をおろし、恋野くんもその手を離す。  すると次の瞬間、会長が梅谷先輩の背中に抱きついた。 「梅谷くん……来てくれたのね」 「え、あ、ああ……」 「……うれしい」  会長が梅谷先輩にしがみつき、先輩はあせったように視線を泳がせる。そして戸惑いながら会長に言う。 「も、もう、僕が来たから大丈夫だ」 「うん……ありがとう。梅谷くん……」  恋野くんが「ちっ」と舌打ちをしたのがわかった。 「やってらんねぇ、行くぞ、紅子」 「う、うん……」  生徒会室から出て行く恋野くんのあとを追う。  ドアのところでそっと振り返ったら、椿先輩と梅谷先輩が見つめ合っていた。  二人の小指にはしっかりと、赤い糸がつながっていた。
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