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「おい、あんた。人を働かせといて、いい身分だな」
夕日を浴びた猫神さまが、その場で大きく伸びをする。
『またしょうもないことをしてくれたにゃ』
「は?」
『縁結びをするのに、暴力や暴言を吐いてどうするにゃ。縁結びはもっと、ハッピーなものなのにゃ』
「文句言うなら自分でやれよ。そんでこの糸さっさと切ってくれ」
恋野くんが小指を猫神さまに突き付ける。猫神さまが「ふー」っと怒って、恋野くんは後ずさりをした。
『まだまだ修行が足りんようだにゃ。ニャーが認めるまで、その糸を切ることはできないにゃ』
「あの、猫神さま?」
私はそんな猫神さまに笑いかける。
「でも恋野くん。人の指に糸を結ぶのは、とっても上手になりました」
恋野くんが呆然と私を見ている。私は恋野くんにも笑顔を見せる。
「だからちょっとは褒めてあげてください」
猫神さまが「ふんっ」と顔をそむけ、「さらばにゃ」と、煙とともに普通の猫に戻って逃げてしまった。
「あー、逃げやがった! ちゃんと俺のこと褒めろよ、クソ猫め!」
文句を言っている恋野くんの後ろで、私は恋野くんとつながっている赤い糸を、もう一度見つめる。
夕日が当たったその糸は、キラキラと美しく光っていた。
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