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二月も終わりかけた日の昼休み。春のようにあたたかい日差しを浴びながら、私は今日も恋野くんと中庭でお弁当を食べていた。
恋野くんはいつものように焼きそばパンを食べ終えると、ベンチの上にごろんと横になる。
「俺、寝るから」
「じゃあチャイムが鳴ったら起こしてあげ……」
「起こさなくていい」
「また午後の授業サボるつもり?」
恋野くんが目を閉じた。この人、大丈夫なのかな? 授業サボってばかりいて。
「大雅くん! やっぱりここにいたのね」
そんな私たちの前に駆け寄ってくる女の人。
「あ……」
私は思わず声を出してしまった。
目の前にやってきたのは、椿会長だった。だけどなんだか雰囲気が違う。一つにまとめていた髪をほどいてゆるく巻き、コンタクトにしたのか眼鏡もしていない。
私の隣で寝ている恋野くんが、薄目を開けて会長を見た。
「生徒指導の先生が捜していたわよ。昼休みに呼び出されていたんでしょう?」
「あんた、どうしたんだ? その頭」
恋野くんがつぶやいて、会長の頬がほわっと赤くなる。
「ちょっとした心境の変化よ。少しはオシャレしてもいいかなと……」
「いいと思います! すごくかわいいです!」
つい口を出してしまった私を見て、会長がうれしそうに微笑む。
「ありがとう」
私も笑って、寝転がったままの恋野くんを見下ろす。
「ね、そう思うよね? 恋野くんも」
恋野くんは「全然」とつぶやくと、また目を閉じてしまった。
素直じゃないなぁ。会長、こんなにかわいいんだから、かわいいって言ってあげればいいのに。誰だって褒められたら、うれしいはずなんだから。
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