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「大雅くん、残念だけど、私もうすぐ卒業なのよね」
会長が目を閉じたままの恋野くんに言う。
「だからもう、あなたの面倒はみてあげられなくなっちゃうけど」
「は? 誰が面倒みてくれって言ったんだよ」
恋野くんが勢いよく起き上がって言った。会長はくすっと笑って、恋野くんに向かって言う。
「でも次の生徒会長に、大雅くんのお世話を頼んでおいたから」
「は?」
「ちゃんと言うこと聞くように」
会長が恋野くんの前に立ち、恋野くんの手をそっとつかむ。そして「これ返すね」と、手のひらの上にシルバーのピアスを静かに置いた。
「椿ー」
渡り廊下から男の人の声がする。
「じゃあ、しっかりね。大雅くん」
椿会長は恋野くんと私にそれぞれ微笑みかけると、渡り廊下で待つ梅谷先輩のもとへ駆け寄っていった。
「なんなんだよ、えっらそーに……ムカつく」
恋野くんがぶすっとした顔で、ピアスののった手のひらを握りしめる。
「椿先輩って、恋野くんよりずーっと大人なんだね」
「は? お前だけには言われたくねぇ」
くすっと笑った私の隣で、恋野くんがまた寝ころんだ。
「ねぇ、次の生徒会長って誰だっけ?」
「知らね」
それだけ答えると、恋野くんは目を閉じてしまった。
教室に戻って、春菜に「次の生徒会長って誰?」と聞いたら教えてくれた。
それは「恋野優雅さんだよ」って。
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