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「こ、恋野先輩を呼んでください!」
三年生の教室に来たのは初めてだった。恋野くんを呼び出すのも初めて。でも早くこの事実を恋野くんに伝えたくて、短い休み時間なのに、こんなところまで来てしまった。
「なにか用?」
ところが出てきた人を見て、私は腰を抜かしそうになった。
その人は、生徒会長の恋野優雅先輩だったから。
「あっ、えっと、すみません……間違えました」
優雅さんは不審そうに私を見たあと、「ああ」とうなずいて言った。
「君、大雅といつも一緒にいる子だね?」
いつもいるわけではないけれど……
「大雅だったら隣のクラスだよ」
「えっ、でも二組だって聞いたんですけど」
「からかわれたんじゃないの? 二組は僕。あいつは一組」
うそ……ひどい。呆然とする私に、優雅さんがやさしく言った。
「でもいまあいつ、いないと思うなぁ。たぶんどこかでサボってるよ」
「そ、そうですか……失礼しました」
「あ、ちょっと待って、君」
自分の教室に戻ろうとした私を、優雅さんが呼び止めた。
「君さ、大雅と付き合ってるの?」
私はぎくっと肩をふるわせ、思いっきり首を横に振る。
「ち、違います! 付き合ってなんかいません!」
「そっか。ならいいけど」
優雅さんがさわやかに笑って私に言った。
「あいつはやめといたほうがいいよ。何人も泣かされた女の子見てきたから」
私は呆然と立ち尽くす。
「それじゃあ」
優雅さんは私に片手を上げて、教室の中に入っていった。
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