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「来ないのかと思った」
私が中庭に行くと、恋野くんが言った。恋野くんは今日もいつものベンチに座って、焼きそばパンを食べている。
「ちょっと、考え事してて……」
「湊ってやつのこと? ちゃんと偵察してきたか?」
私はうなずいて、恋野くんからできるだけ離れて座る。渡り廊下を歩く人の声が聞こえて、なぜだか逃げたくなる。
恋野くんはそんな私を見て、首をかしげる。
「なんかお前……俺のこと避けてない?」
「えっ、ううん! そんなことないよ!」
思いっきり笑顔を作ってそう言ってみたけど、恋野くんはますます顔をしかめた。
まずい。あんまりこの人を怒らせない方がいいかも。
だって『やめといたほうがいい』と言われても、私はこの人から離れられない。指と指に、赤い糸がつながってしまっているから。
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