第4話 君は僕の安全地帯

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「あれ、どうしたの? 花園さん」  その日の放課後、私は湊くんのクラスに行った。 「う、うん。ちょっと。湊くん、これから部活?」 「そうだよ」 「じゃあ途中まで一緒に行こうかなぁ……なんて。私は帰るだけなんだけど」  湊くんは不思議そうな顔をしたあと、すぐに笑顔になって言った。 「いいよ。途中まで一緒に行こう」  私はポケットの中の赤い糸をぎゅっとにぎる。いい作戦はまだ思いつかないけど、とりあえず湊くんに近づいて、この糸の片側を結んでしまおうと思ったんだ。  湊くんと歩き出しながら、ちらりと教室の中を見る。凪くんは帰る支度もしないで、まだ席に座ったまま本を読み続けていた。
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