第4話 君は僕の安全地帯

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 廊下を歩いていると、たくさんの人たちが湊くんに声をかけてきた。 「よう、湊! これから部活?」 「湊くん、ひさしぶりー、元気?」 「ばいばい、湊くん。また明日ねー」  湊くんはそれぞれににこにこしながら応えている。私にはとてもできない神対応だ。  やっぱり湊くんは男の子にも女の子にもすごくモテる。 「湊くんって、すごい人気者だよね」  私が言うと、湊くんは照れた顔で私を見た。 「そんなことないよ。モテたいと思った人には全然モテないし」  私の胸がちくんと痛む。湊くんは凪くんと結ばれないと思ってるのかな。 「湊くんは……好きな人、いるの?」  つい、聞いてしまった。湊くんは前を向いて、いつもよりちょっと大人びた表情でつぶやいた。 「うん。いるよ」  凪くんのことだ。 「なんか、俺とは全然タイプが違う人なんだけど。去年図書委員会で一緒でさ。話してみたらすごく安心できたっていうか、ホッとできる安全地帯みたいな人で……俺、すぐみんなにいい顔しちゃうからさ。実はちょっと疲れてて……」  湊くんはそこまで言うと、はははっと力なく笑った。 「向こうは俺のことなんか、なんとも思ってないだろうけど」 「そんなことないよ!」  私は立ち止まり、湊くんに言う。 「湊くんはいい人だもん。明るいしやさしいし、誰にでも親切だし。だからきっとその人も湊くんのこと……」 「いいんだよ。俺は一生片思いで」  そんな……そんな悲しいこと言わないでよ。  なんだか涙が出そうになる。
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