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廊下を歩いていると、たくさんの人たちが湊くんに声をかけてきた。
「よう、湊! これから部活?」
「湊くん、ひさしぶりー、元気?」
「ばいばい、湊くん。また明日ねー」
湊くんはそれぞれににこにこしながら応えている。私にはとてもできない神対応だ。
やっぱり湊くんは男の子にも女の子にもすごくモテる。
「湊くんって、すごい人気者だよね」
私が言うと、湊くんは照れた顔で私を見た。
「そんなことないよ。モテたいと思った人には全然モテないし」
私の胸がちくんと痛む。湊くんは凪くんと結ばれないと思ってるのかな。
「湊くんは……好きな人、いるの?」
つい、聞いてしまった。湊くんは前を向いて、いつもよりちょっと大人びた表情でつぶやいた。
「うん。いるよ」
凪くんのことだ。
「なんか、俺とは全然タイプが違う人なんだけど。去年図書委員会で一緒でさ。話してみたらすごく安心できたっていうか、ホッとできる安全地帯みたいな人で……俺、すぐみんなにいい顔しちゃうからさ。実はちょっと疲れてて……」
湊くんはそこまで言うと、はははっと力なく笑った。
「向こうは俺のことなんか、なんとも思ってないだろうけど」
「そんなことないよ!」
私は立ち止まり、湊くんに言う。
「湊くんはいい人だもん。明るいしやさしいし、誰にでも親切だし。だからきっとその人も湊くんのこと……」
「いいんだよ。俺は一生片思いで」
そんな……そんな悲しいこと言わないでよ。
なんだか涙が出そうになる。
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