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私は手を伸ばし、湊くんの手を握った。湊くんがはっとした顔をする。
「湊くんは覚えてないと思うけど……入学して初めて私に話しかけてくれたの、湊くんなんだよ」
「え?」
「覚えてないでしょ?」
湊くんが困ったように笑う。
「ごめん」
「いいよ。でも私はすごく嬉しかったの。知らない人ばかりで心細かったから。その時、私すごくホッとしたんだよ」
私は湊くんの小指に赤い糸を結び付けると、その手をそっと離した。
「だからきっと……湊くんもその人にとっての、安全地帯かもしれないよ?」
「花園さん……」
湊くんは私の名前をつぶやいたあと、いつもみたいににっこり笑った。
「ありがとう! なんか元気出た」
「そう? よかった」
「じゃあ、俺、部活行くから」
「うん。がんばってね」
私が小さく手を振ると、湊くんも手を振って走って行った。
湊くんには笑っていて欲しい。そして凪くんと上手くいって欲しい。
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