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「あ、あの……私、そんなつもりは……」
「花園さんみたいな人に湊は似合わないよ。湊はすっごくいいやつなんだから。去年一緒に図書委員をやった時、友だちのいない僕に一番に声をかけてくれて……」
凪くんはまたあわてて言葉を切って、私のことを押し出そうとする。
「もう出てってよ! 彼氏が待ってるよ!」
えっと思って後ろを振り返ると、なぜかそこに恋野くんがいた。恋野くんは「そうそう」と凪くんに話を合わせながら、近づいてくる。
「そうなんだよ。こいつ俺と付き合ってるくせに、すぐ男にちょっかい出すからさ。湊くん、気をつけたほうがいいよ」
恋野くんは呆然としている湊くんの肩をぽんっと叩いて、さりげなく湊くんの指についている糸を拾い上げた。
「この女、すぐに手を握ってきたりするだろ? こんなふうに」
そして凪くんの手を握るふりをしながら、湊くんからつながった糸を指に結び付けた。
「あ、あの……あなたも凪の手握るの、やめてもらえませんか?」
湊くんの声に、恋野くんはははっと笑って手を離す。
「あー、ごめん、ごめん。じゃ、俺はこの女連れて帰るから。邪魔して悪かったな」
「ちょっ、恋野くん!」
恋野くんは強引に私の肩を抱いて、引きずるように外へ連れ出した。
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