129人が本棚に入れています
本棚に追加
「ま、これで、あとは二人でどうにかするだろ。糸は結んだんだし」
廊下に出ると、恋野くんは私からぱっと手を離してそう言った。
「あのっ、これって、私が一番いやな役じゃないですか!」
「まぁ、そうなるよな。言ったじゃん、昨日。誰が嫉妬してるかわかんねぇぞって」
「それって……」
「凪に教えてやったんだよ。お前らがいちゃいちゃしてるぞって」
「いちゃいちゃなんかしてないでしょ! もうひどい!」
恋野くんがはははっと笑って歩き出す。私はそのあとを追いかける。
「それから私は恋野くんと付き合ってなんかないから! そこも撤回してよね!」
「そのうち別れたって言っとくよ。この糸が切れたら」
「あ……」
その時、私は気がついた。前から歩いてくる人の姿に。
それは生徒会長の恋野先輩。恋野くんのお兄さんの優雅さんだ。
私はちらっと恋野くんを見る。恋野くんは黙って前を向いて歩いている。
二人が近づいてすれ違った。だけどどちらも話しかけたりしない。ていうか、目を合わせようともしなかった。
それはなんていうか……すごく冷たい感じがした。
最初のコメントを投稿しよう!