第4話 君は僕の安全地帯

16/18
前へ
/185ページ
次へ
「ま、これで、あとは二人でどうにかするだろ。糸は結んだんだし」  廊下に出ると、恋野くんは私からぱっと手を離してそう言った。 「あのっ、これって、私が一番いやな役じゃないですか!」 「まぁ、そうなるよな。言ったじゃん、昨日。誰が嫉妬してるかわかんねぇぞって」 「それって……」 「凪に教えてやったんだよ。お前らがいちゃいちゃしてるぞって」 「いちゃいちゃなんかしてないでしょ! もうひどい!」  恋野くんがはははっと笑って歩き出す。私はそのあとを追いかける。 「それから私は恋野くんと付き合ってなんかないから! そこも撤回してよね!」 「そのうち別れたって言っとくよ。この糸が切れたら」 「あ……」  その時、私は気がついた。前から歩いてくる人の姿に。  それは生徒会長の恋野先輩。恋野くんのお兄さんの優雅さんだ。  私はちらっと恋野くんを見る。恋野くんは黙って前を向いて歩いている。  二人が近づいてすれ違った。だけどどちらも話しかけたりしない。ていうか、目を合わせようともしなかった。  それはなんていうか……すごく冷たい感じがした。
/185ページ

最初のコメントを投稿しよう!

129人が本棚に入れています
本棚に追加