第4話 君は僕の安全地帯

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「ね、ねぇ、恋野くん」  優雅さんが通り過ぎたあと、私は恋野くんに聞いた。 「恋野くんって……お兄さんと仲悪いの?」 「は?」  恋野くんはいつもの口調でそう言って、顔をしかめた。 「仲悪いけど?」 「わ、悪いんだ……兄弟なのに?」  恋野くんが私を見て、ふっと小さく笑う。 「兄弟だからって仲がいいとは限らねぇだろ? お前の知ってる世界がすべてじゃないってこと」 「ああ……」  私にはきょうだいがいないから。なんとなくきょうだいはみんな仲がいいものだと思い込んでいた。  でも……目も合わせようとしない兄弟って……やっぱりなんだか哀しい。  前を向いた恋野くんは、そのままどんどん歩いていく。私はその少し後ろをついていく。  恋野くんはどうして、お兄さんと仲が悪いんだろう。  お兄さんはどうして、恋野くんのこと「やめとけ」なんて言うんだろう。  なんとなくうつむいて、自分の小指を見る。私の運命の赤い糸は、恋野くんにつながっている。  でも……  私は恋野くんのこと、なんにも知らないんだ。
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