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「ね、ねぇ、恋野くん」
優雅さんが通り過ぎたあと、私は恋野くんに聞いた。
「恋野くんって……お兄さんと仲悪いの?」
「は?」
恋野くんはいつもの口調でそう言って、顔をしかめた。
「仲悪いけど?」
「わ、悪いんだ……兄弟なのに?」
恋野くんが私を見て、ふっと小さく笑う。
「兄弟だからって仲がいいとは限らねぇだろ? お前の知ってる世界がすべてじゃないってこと」
「ああ……」
私にはきょうだいがいないから。なんとなくきょうだいはみんな仲がいいものだと思い込んでいた。
でも……目も合わせようとしない兄弟って……やっぱりなんだか哀しい。
前を向いた恋野くんは、そのままどんどん歩いていく。私はその少し後ろをついていく。
恋野くんはどうして、お兄さんと仲が悪いんだろう。
お兄さんはどうして、恋野くんのこと「やめとけ」なんて言うんだろう。
なんとなくうつむいて、自分の小指を見る。私の運命の赤い糸は、恋野くんにつながっている。
でも……
私は恋野くんのこと、なんにも知らないんだ。
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