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「花園さーん!」
数日後、私は湊くんに声をかけられた。その隣には凪くんがいる。私はぎょっとして立ち止まる。
「花園さん、元気だった? 最近会わないからさ」
湊くんは何事もなかったかのように、にこにこと話しかけてくる。私は耐えきれなくなって、二人の前で頭を下げる。
「あのっ、この前はごめんなさい! でも私、湊くんにちょっかい出すとかそんなつもりは全然なくて」
「えー、なに謝ってるの? 花園さん。俺たちそんなこと全然思ってないって」
「え……」
顔を上げると、湊くんがまたにっこり笑った。
「花園さんはそんな人じゃないよって、凪にもわかってもらえたよ。花園さんは俺のこと応戦してくれたんだって。応援してもらえたから、俺は凪に……」
そこまで言った湊くんが顔を赤くする。凪くんがそんな湊くんの肩をぽんっと叩く。
「花園さん」
「はいっ」
凪くんに声をかけられ、びくっとしてしまう。
「僕たちの関係は、とりあえず内密に。湊のファンにいやがらせされたら困るから」
「わかりました!」
凪くんが湊くんに「行こうか」と言って、湊くんは「うん」とうなずく。
「じゃあ、花園さん、またね」
「うん、また」
凪くんがじろっと私をにらんで、私はまたびくっとしてしまう。でも凪くんはすぐににやっと笑ってこう言った。
「あの不良みたいな彼氏によろしく」
彼氏じゃないのに……
私は小さく手を振って、二人を見送る。去っていく二人の小指には、赤い糸がしっかりと結び付いていた。
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