第5話 不屈の男

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「しっかし、あの柿沢がねぇ……」  中庭から昇降口に向かいながら、恋野くんがにやにやしながら言う。 「失礼だよ、恋野くん。その言い方」 「は? お前だって思っただろ? あんなおっさんみたいなやつが、縁結びの神社で神頼みしてるなんて、笑えるって」 「だからやめなって。自分がそんなふうにバカにされたらいやでしょ?」 「俺はあんなうさん臭い猫に、神頼みなんかしねぇよ」  恋野くんがそう言い捨てて、三年生の下駄箱のほうへ向かった。  それでも恋野くんは、ちゃんと猫神さまの言うことを聞いている。今回のミッションだって、なんだかんだ言いながら、けっこうやる気なんだ。 「で、相手の一年ってどんな子だった?」  靴を履き替えている私に、下駄箱の向こうから恋野くんが聞く。 「うん。かわいい子だったよ」  私は少し離れた二年生の下駄箱から答える。 「ほんとかよ。女ってすぐ『かわいい』とかいうけど、マジでそう思ってんの? ほんとはみんな、自分のほうがかわいいって思ってるんだろ?」 「そんなこと思ってないよ! ほんとにかわいかったんだから!」  そこまで言って、はっと口を閉じる。玄関から外へ出て行く、見覚えのある女の子の姿が目に映ったから。  私はあわてて下駄箱の間をすり抜け、恋野くんのそばへ行く。
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