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「こ、恋野くん!」
「あ? なんだよ」
「いたの。その子が……いまそこに」
恋野くんの腕をつかんで、下駄箱の陰からそっとドアのほうを見た。
校門のほうへ歩いていくのは、猫神さまに神頼みに来た三年生、『柿沢剛毅』先輩の想い人、一年生の『天音桃香』ちゃんだった。
黒縁の丸い眼鏡をかけ、髪を二つに結んでいる桃香ちゃんは、アニメ同好会というものに所属しているらしい。友だちとしゃべっている声を聞いたけど、声も声優さんみたいにかわいかった。
「へぇ、あの子が柿沢の……まぁ、かわいいかかわいくないかだったら、かわいいのほうかな……」
「しっ!」
私は唇に指をあて、もう片方の手で指をさす。恋野くんはふてくされた様子で、私の指先を目で追いかける。
「あれ、見て」
桃香ちゃんのあとを追うようについていく、大柄な男子生徒。
「なんだよ、柿沢じゃん」
そう、いつの間にか現れたのは、柔道着から制服に着替えた柿沢先輩だった。
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