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桃香ちゃんの後ろをこそこそとついていく柿沢先輩。そのあとをついていく私たち。小柄な桃香ちゃんの姿は、大柄な柿沢先輩にすっぽり隠れて、ここから見えない。
「さっきまで柔道やってたのに……先輩素早いね」
桃香ちゃんの帰宅時間に合わせて、急いで来たのだろうか。もしかして毎日?
「あいつ、あのメガネちゃんのストーカーじゃねぇの?」
恋野くんは柿沢先輩をバカにするように、にやにや笑っている。
ちりんっと自転車のベルが鳴り、私たちは道の端によけた。自転車はまたベルを鳴らしながら、我が物顔で進んで行く。すると柿沢先輩が、じろりと自転車をにらみつけた。運転していた人はあわてたように、そこを大きく避けて逃げていく。
「あれ、桃香ちゃんのこと守ってるのかな?」
「ボディガードのつもりかよ」
先輩はきょろきょろと必死に周りを見回し、桃香ちゃんを気遣っている。桃香ちゃんはなにも気づいていないようだけど。
「まぁ、いいや。ちょうど近くにいるんだ。とっととその糸結んじゃおうぜ」
恋野くんが私のポケットを指さす。この中に猫神さまからもらった赤い糸が入っているのだ。
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