第1話 猫神さまと運命の赤い糸

8/20

129人が本棚に入れています
本棚に追加
/185ページ
 転んだ時に擦りむいた膝小僧が痛い。先輩にはフラれるし、不良にはにらまれるし、今日はなんてサイアクな日なんだろう。  神社からだいぶ離れたところまできて、私は息を吐く。  足を引きずり、住宅街をとぼとぼと歩いていると、あたりにその声が響いた。 「やきいも~ ほっかほかのやきいもだよ~」  焼き芋屋さんだ。見るとちょうど目の前に焼き芋屋さんのトラックが止まっていて、おいしそうな匂いがふわふわと漂ってくる。  私はごくんと唾を飲み込んだ。お腹がぐうっと音を立てる。  焼き芋、大好きなんだよね。でもダイエットしてるから買い食いはだめだ。  そう思って、はっと気づく。  私がダイエットしていたのは、桜庭先輩に告白するため。  バスケ部のキャプテンで、背が高くてカッコいい先輩に釣り合うような、スリムな女の子になるため。  だけどフラれてしまった私はもう……ダイエットする意味ないんじゃないの? 「あー! もういいや!」  私はカバンから財布を取り出すと、焼き芋屋さんに向かって駆け出した。 「おじさーん! 焼き芋ください!」
/185ページ

最初のコメントを投稿しよう!

129人が本棚に入れています
本棚に追加