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転んだ時に擦りむいた膝小僧が痛い。先輩にはフラれるし、不良にはにらまれるし、今日はなんてサイアクな日なんだろう。
神社からだいぶ離れたところまできて、私は息を吐く。
足を引きずり、住宅街をとぼとぼと歩いていると、あたりにその声が響いた。
「やきいも~ ほっかほかのやきいもだよ~」
焼き芋屋さんだ。見るとちょうど目の前に焼き芋屋さんのトラックが止まっていて、おいしそうな匂いがふわふわと漂ってくる。
私はごくんと唾を飲み込んだ。お腹がぐうっと音を立てる。
焼き芋、大好きなんだよね。でもダイエットしてるから買い食いはだめだ。
そう思って、はっと気づく。
私がダイエットしていたのは、桜庭先輩に告白するため。
バスケ部のキャプテンで、背が高くてカッコいい先輩に釣り合うような、スリムな女の子になるため。
だけどフラれてしまった私はもう……ダイエットする意味ないんじゃないの?
「あー! もういいや!」
私はカバンから財布を取り出すと、焼き芋屋さんに向かって駆け出した。
「おじさーん! 焼き芋ください!」
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