第5話 不屈の男

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「わかったよ」  そんな私の耳に、恋野くんの声が聞こえた。 「もう喧嘩はしない」 「えっ」  私は驚いて顔を上げる。だって恋野くんが素直に私の言うこと、聞いてくれるなんて思っていなかったから。  恋野くんは私を見て、顔をしかめる。 「もう喧嘩はしないって言ってんだよ」 「あ、うん」 「お前がそうしろって言ったんだろ?」 「そ、そうだね」 「だからもう、普通にしゃべれよ」  恋野くんが私に小指を見せる。 「だって俺たち、離れたくても離れられないんだろ?」  私たちの横を走り抜けていく男の子たち。楽しそうに笑い合う女の子たち。  だけどみんなの目には見えていない。私たちだけに見えている、赤い糸。 「うん……わかった」 「だったらさ、さっさとやることすませようぜ」  恋野くんが私の手をぎゅっと握った。私の心臓がどきっと跳ねる。 「あのメガネちゃんに聞いてみよう。昨日の男は彼氏なのかって」 「ええっ、いきなりそんなこと」 「いいから、行くぞ」  恋野くんが私を引っ張って廊下を歩き出す。恋野くんにつかまれた手が、すごく熱い。  結局恋野くんのやり方は強引なんだ。だけどそれでうまくいくこともある。  いつまでもながめているだけじゃ、なにもはじまらない。
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