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「わかったよ」
そんな私の耳に、恋野くんの声が聞こえた。
「もう喧嘩はしない」
「えっ」
私は驚いて顔を上げる。だって恋野くんが素直に私の言うこと、聞いてくれるなんて思っていなかったから。
恋野くんは私を見て、顔をしかめる。
「もう喧嘩はしないって言ってんだよ」
「あ、うん」
「お前がそうしろって言ったんだろ?」
「そ、そうだね」
「だからもう、普通にしゃべれよ」
恋野くんが私に小指を見せる。
「だって俺たち、離れたくても離れられないんだろ?」
私たちの横を走り抜けていく男の子たち。楽しそうに笑い合う女の子たち。
だけどみんなの目には見えていない。私たちだけに見えている、赤い糸。
「うん……わかった」
「だったらさ、さっさとやることすませようぜ」
恋野くんが私の手をぎゅっと握った。私の心臓がどきっと跳ねる。
「あのメガネちゃんに聞いてみよう。昨日の男は彼氏なのかって」
「ええっ、いきなりそんなこと」
「いいから、行くぞ」
恋野くんが私を引っ張って廊下を歩き出す。恋野くんにつかまれた手が、すごく熱い。
結局恋野くんのやり方は強引なんだ。だけどそれでうまくいくこともある。
いつまでもながめているだけじゃ、なにもはじまらない。
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