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「ああ、そういえば、会長は双子なんだって聞いたことあります。なんか漫画の世界みたいですよね」
桃子ちゃんがぱあっと、にこやかな顔になって言う。
「でもそんな先輩方が、どうして私のことなんて」
「ああ、俺の友だちが桃香ちゃんのこと好きらしくて」
「えっ、私のことをですか!」
今度は頬を真っ赤にする桃香ちゃん。なんだかかわいい。
「でもそいつ、図体デカいくせに、桃香ちゃんの前ではビビりでさ。桃香ちゃんのこと、遠くから見てるだけしかできないみたいなんだよな。漫画みたいだろ?」
桃香ちゃんは顔を赤くしたまま、立ち尽くしている。
「あ、でもいざとなったら強そうなやつだから。なにがあっても桃香ちゃんのこと守ってくれると思うから心配しないで」
「は、はぁ……」
ぼうっとしている桃香ちゃんに、恋野くんが手を振る。
「じゃあ、俺の友だちをよろしく」
そしてまた私の手を引っ張って、廊下を走る。
「ちょっと、恋野くん! いまのでいいの? 桃香ちゃん、わけわかんないって顔してたけど」
「いいんだよ。彼氏いないってわかったんだし。あとは柿沢を説得して告らせる」
「桃香ちゃんのそばにいれば、柿沢先輩また来るんじゃないの?」
「来ないよ、あいつは」
「どうして?」
「落ち込んでるから」
私は前を走る恋野くんの背中を見る。
「だから俺が背中ひっぱたいてやる」
恋野くんはやっぱり強引だ。
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