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「どうするの? このままじゃ柿沢先輩、桃香ちゃんのことあきらめちゃうよ」
校舎を出て恋野くんと歩く。恋野くんは晴れた空を見上げてつぶやく。
「まぁ、なんとかなるだろ。とりあえず糸の片方はあいつの指についてるんだし」
「でも、柿沢先輩がやる気になってくれないと……」
その時、近くのコンビニの陰に、学ランを着た他校生の姿が見えた。あの人たち、見たことがある。見るからにガラの悪そうな……前に恋野くんと喧嘩していた人たちだ。
「あっ……」
私はその場に立ち止まり、恋野くんの制服を引っ張る。
「なんだよ」
「あれっ、桃香ちゃんじゃないの?」
桃香ちゃんは三人の男に囲まれて、絡まれているみたいだった。おびえたような表情で、震えている。
「た、たすけてあげて!」
私は恋野くんの服をもっと引っ張った。
「でも俺、喧嘩しないって決めたし。この状況で俺が行ったら、絶対あいつらともめるぞ?」
「は? なに言ってんの? 桃香ちゃんのこと、このままほっとくって言うの?」
「喧嘩するなって言ったの、お前じゃん」
「それとこれとは……」
言いかけた私の横を、すうっと大きな体の人が通り過ぎた。
「柿沢先輩?」
見ると柿沢先輩が桃香ちゃんを守るように、三人の前に立ちふさがった。
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