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焼き芋を抱えながら、北風の吹く帰り道を歩く。ほかほかの焼き芋に、疲れた心がちょっとだけあったかくなる。
家に帰ったらこれ食べて、嫌なことは忘れよう。明日になったらちゃんと笑って、春菜に報告しよう。そして桜庭先輩のことは――もう忘れるんだ。
心の中でそう決心したはずなのに、また涙がじわっと出てきた。私の涙腺壊れちゃったみたい。
ぐすっと鼻をすすって焼き芋を抱きしめた時、誰かが私の背中に飛びついてきた。
「たすけてくれ!」
「えっ?」
驚いて振り向くと、制服を着た男の人が私の背中に張り付いている。といっても、私よりかなり背が高いから、ずいぶんはみ出しているけれど。
「あっ!」
私は張り付いている人の顔を見て、思わず声を上げた。
私と同じ制服。金色に近い茶色い髪。耳についたシルバーのピアス。この人、さっき喧嘩してたチャラい不良だ。
するとその茶髪男が、私の背中でこう言った。
「頼む! あいつを追い払ってくれ。俺のあとしつこくついてくるんだ」
私がいま来た道を振り返ってみると、ちょうど足元のあたりで「ふー!」っと怖い顔をしてうなっている、もふもふと太った三毛猫の姿が見えた。
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