第5話 不屈の男

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「天音さんに手を出すな!」 「は? なんだ、てめぇ」 「俺たちとやる気か?」  三人のヤンキーが先輩に詰め寄る。  どうしよう、どうしよう、喧嘩になっちゃう。  恋野くんを見上げても、まったく動く気配はない。 「け、警察っ、警察呼ぼう!」 「この状況で警察が来たら、柿沢まで捕まるぞ? あいつ柔道部だからヤバいんじゃねぇの?」 「じゃあどうすればいいの!」 「まぁ、もうちょっとながめてよう」  どうしてそんなのん気なの? だったら私がなんとかするしかない。  私が駆け寄ろうとした時、柿沢先輩の前に桃香ちゃんが飛び出した。 「やめてください! ぶつかった私が悪いんです! 文句あるなら私に言ってください!」  桃香ちゃんは小さな体で先輩をかばうように両手を広げ、毅然とした顔つきで三人をにらんでいる。 「あ、天音さん……無茶だ」 「柿沢先輩は黙っててください。柔道部なんですから、喧嘩なんかしちゃダメです」 「え、なんで俺のこと……」  桃香ちゃんの顔がほんのり赤く染まる。  その時私はピンときた。桃香ちゃんもきっと柿沢先輩のこと……
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