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「天音さんに手を出すな!」
「は? なんだ、てめぇ」
「俺たちとやる気か?」
三人のヤンキーが先輩に詰め寄る。
どうしよう、どうしよう、喧嘩になっちゃう。
恋野くんを見上げても、まったく動く気配はない。
「け、警察っ、警察呼ぼう!」
「この状況で警察が来たら、柿沢まで捕まるぞ? あいつ柔道部だからヤバいんじゃねぇの?」
「じゃあどうすればいいの!」
「まぁ、もうちょっとながめてよう」
どうしてそんなのん気なの? だったら私がなんとかするしかない。
私が駆け寄ろうとした時、柿沢先輩の前に桃香ちゃんが飛び出した。
「やめてください! ぶつかった私が悪いんです! 文句あるなら私に言ってください!」
桃香ちゃんは小さな体で先輩をかばうように両手を広げ、毅然とした顔つきで三人をにらんでいる。
「あ、天音さん……無茶だ」
「柿沢先輩は黙っててください。柔道部なんですから、喧嘩なんかしちゃダメです」
「え、なんで俺のこと……」
桃香ちゃんの顔がほんのり赤く染まる。
その時私はピンときた。桃香ちゃんもきっと柿沢先輩のこと……
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