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「なんだこの子、俺らとやろうってのか?」
「おもしれぇじゃん、つきあえよ」
学ラン男が手を出した瞬間、柿沢先輩が桃香ちゃんをひょいっと軽々抱き上げた。
「天音さん! つかまって!」
お姫様抱っこされた桃香ちゃんが、戸惑いながらも柿沢先輩にしがみつく。
「このまま逃げるぞ!」
「あ、おいっ、待て!」
先輩が桃香ちゃんを抱いたまま駆け出した。ヤンキーたちがそのあとを追いかける。先輩は全速力で走っているけど、身軽なヤンキーたちのほうが断然有利だ。しかも三人……
「紅子っ、柿沢たちのあとを追え!」
恋野くんが私に言った。
「えっ」
「そんであの子の指に糸を結び付けろ! 早くっ!」
「でもっ、恋野くんは……」
「いいから早く行けっ」
私は桃香ちゃんを抱っこして走る柿沢先輩を追いかけた。走りながら振り返ったら、三人の前に立つ恋野くんの姿が見えた。
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