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「大丈夫? 天音さん」
桃香ちゃんを抱きかかえて走り続けた柿沢先輩は、コンビニからずいぶん離れた公園まで来て、やっと桃香ちゃんを地面に下ろした。
「だ、大丈夫です……」
「よかった。怪我がなくて」
柿沢先輩がほっとしたように頬をゆるめる。桃香ちゃんはそんな先輩の前で赤くなりながら言う。
「柿沢先輩も……お怪我がなくてよかったです」
「あの、どうして俺の名前を?」
「先輩こそ、私の名前ご存じなんですか?」
今度は先輩が赤くなった。完全に両思いだ、この二人。
気が抜けたような、ほっとしたような気分で息を吐き、私ははっと気づく。
こんなところでのんびりしている場合じゃない。私にはやらなきゃいけない仕事がある。ちゃんとやらなきゃ。恋野くんに任されたんだから。
そんなことを考えていたら、桃香ちゃんに声をかけられてしまった。
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