第5話 不屈の男

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 走って神社の鳥居をくぐる。薄暗くなり始めた森の中を駆け抜けると、お社の前の石段に座っている人影が見えた。 「恋野くん!」  私が名前を呼ぶと、恋野くんが顔を上げて私を見た。 「ちゃんと糸、結んできたか?」  私は息を切らしながらうなずく。 「よし。お前一人で大丈夫かって心配してたんだよ」 「恋野くんは……」  全力で走って来たから、まだ息が切れる。 「大丈夫だった?」 「なにが?」  とぼけている恋野くんの前にしゃがみ込む。恋野くんの白いワイシャツは泥だらけだ。 「あの二人を結んだのは私一人の力じゃないよ。恋野くんのおかげだよ」  私は恋野くんの顔を見つめながら言う。 「だって恋野くんが引き止めてくれたんでしょ? あの三人のこと」 「なんのことだかわかんねぇ」  恋野くんはまだとぼけてる。だから私は恋野くんのほっぺをぺちっと軽く叩いてやった。 「いってぇ!」 「怪我してるくせに」  私はカバンの中から絆創膏を取り出して、うっすらと血のにじんでいる頬にぺたっと貼った。 「ありがとう。恋野くん」  恋野くんといるとドキドキして、いつもハラハラさせられる。だけどどうしても放っておけない。これってやっぱり運命の赤い糸のせい? 「でも許すのは今日だけだからね。もう絶対喧嘩しないでよ」  黙って私を見ていた恋野くんが、ふっと笑って答える。 「はいはい。わかりました」 「ちょっと! なにその返事! 私は本気で恋野くんのこと心配して……」 「うっせぇなぁ、お前は」 「うるさいってなによ! 恋野くんっ!」  思わず振り上げた手を、恋野くんにつかまれた。 「暴力はいけないんだろ?」  恋野くんと目が合って、急に恥ずかしくなる。
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