第5話 不屈の男

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『こほん』  その時私の耳に、その咳払いが聞こえた。 『お前たち、神聖な境内でなにをいちゃいちゃしておるのにゃ』 「いちゃいちゃなんかしてない!」  私と恋野くんの声が重なった。サイアク……  すると恋野くんが猫神さまに向かって言った。 「なぁ、俺たち今回もちゃんとミッションクリアしたんだからさ、そろそろこの糸切ってくれよ」  私の心臓がどくんと音を立てる。  そうだった。私たちはこの糸を切ってもらうために、縁結びの仕事をしているんだ。 『ダメにゃ。まだお前は修行が足りないのにゃ』 「は?」 『お前は手加減というものを知らんのかにゃ? 三人も病院送りにするとは何事にゃ』  三人病院送りって……やっぱりこの人ヤバいかも。  私がすすっと恋野くんから体を離したら、恋野くんがじろっと私をにらんだ。 『したがってまだお前たちには、ニャーの仕事を手伝ってもらうにゃ』 「なんでだよー! このクソ猫!」  恋野くんが文句を言っている。だけど私はなんだかちょっとホッとしていた。  まだ恋野くんとつながっていられることに、ホッとしていたんだ。
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