129人が本棚に入れています
本棚に追加
『こほん』
その時私の耳に、その咳払いが聞こえた。
『お前たち、神聖な境内でなにをいちゃいちゃしておるのにゃ』
「いちゃいちゃなんかしてない!」
私と恋野くんの声が重なった。サイアク……
すると恋野くんが猫神さまに向かって言った。
「なぁ、俺たち今回もちゃんとミッションクリアしたんだからさ、そろそろこの糸切ってくれよ」
私の心臓がどくんと音を立てる。
そうだった。私たちはこの糸を切ってもらうために、縁結びの仕事をしているんだ。
『ダメにゃ。まだお前は修行が足りないのにゃ』
「は?」
『お前は手加減というものを知らんのかにゃ? 三人も病院送りにするとは何事にゃ』
三人病院送りって……やっぱりこの人ヤバいかも。
私がすすっと恋野くんから体を離したら、恋野くんがじろっと私をにらんだ。
『したがってまだお前たちには、ニャーの仕事を手伝ってもらうにゃ』
「なんでだよー! このクソ猫!」
恋野くんが文句を言っている。だけど私はなんだかちょっとホッとしていた。
まだ恋野くんとつながっていられることに、ホッとしていたんだ。
最初のコメントを投稿しよう!