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「うーん……」
今日は朝から天気が悪かった。降り出しそうで降り出さない空の下、私はいつものように中庭で恋野くんとお弁当を食べていた。
「なにうなってんだよ、さっきから。飯がまずくなっちまうだろ」
恋野くんが私をにらんでから、焼きそばパンにかじりつく。
「だって……やっぱりよくないよ……」
「クソ猫からのミッションか」
口をもぐもぐ動かしながら、恋野くんが言う。
昨日、私たちは猫神さまに呼び出され、次の縁結びの仕事を任された。
最近恋野くんは、猫神さまにこき使われることをあきらめたようで、あまり文句を言わなくなった。
だけど私はその二人の名前を聞いた途端、すごく困った。
「生徒と教師の恋愛なんて……」
猫神さまから伝えられた名前。神社に神頼みをしに来たのは『織本葉月』私と同じクラスの女の子。そして彼女の想い人は、同級生でも先輩でもなく……同じ学校の先生だったのだ。
「数学の『赤星慧』かー。やるなぁ、あいつも。まぁ、教師にしてはイケメンだしな」
恋野くんがのん気に言う。
「や、やるなぁって……まだなんにもやってないでしょ? 赤い糸は結ばれてないんだからっ」
「なんかやらしーぞ? お前の言い方」
ニヤニヤ笑っている恋野くんから顔をそむけ、私は口をとがらせる。
「私は真面目に考えてるの! 本当にその糸、結んでいいのかって」
葉月がとてもいい子なのはわかっている。赤星先生だっていい先生だ。でも生徒と教師の恋愛なんて、もし付き合えたとしても絶対試練が待っている。
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