第6話 織姫のシュークリーム

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「そんなのお前が決めることじゃねぇだろ?」  そんな私に恋野くんが言った。 「べつに教師と生徒が結ばれたっていいじゃん。すぐに結婚するわけでもないだろうし、隠れて付き合えばわかんねーって」 「それがよくないって言ってるの! 葉月はいい子なんだから、そんな危険な真似はさせられない!」 「じゃあ葉月って子の願いを叶えてやらないっての?」 「それは……」  葉月は猫神さまにお願いしたんだ。赤星先生と結ばれますようにって。猫神さまの前で手を合わせ、きっと一生懸命に。 「神さまが叶えてやるって決めたんだ。お前が決めたんじゃねぇよ」  私は黙って恋野くんを見る。 「そうだろ? 俺たちはあいつの言われた通りに仕事してればいーんだよ」  そうだよね。神さまが決めたことに、私が反対なんかできるわけない。 「紅子ちゃーん」  そんな私の耳に、かわいらしい声が聞こえてきた。 「葉月……」 「家庭科室行くよー」  渡り廊下から葉月と春菜が手を振っている。  葉月とは二年生になって知り合った。茶色くてふわふわした髪を肩の上で揺らしている、肌が白くて唇がピンク色の、ほんわかしたかわいい子。  ちょっとのんびりしているけど、そこが私とぴったり合って、最近はいつも一緒にいる。  今日はこのあと、奥の校舎にある家庭科室で調理実習だから、中庭からそのまま行くことになっていたんだ。 「じゃあ……」  立ち上がった私に「忘れもん」と恋野くんが言った。  ベンチに座っている恋野くんを見下ろすと、ポケットから赤い糸を取り出し私の手ににぎらせた。 「友だちなら楽勝だろ? 片側結んどいて」  恋野くんはそう言うと、どうでもいいようにベンチに転がって寝てしまった。
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