りなの図書室登校

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りなの図書室登校

『ゆみこ先生、おはようございます。』りなの挨拶に司書のゆみこ先生はいつもの通り、にこやかに応えてくれる。 『りなちゃんおはよう。今日はりなちゃんの好きなシリーズ、新作入ってるわよ。』 『えっ!?本当?後で読みたい!』 お気に入りのシリーズの次回作を楽しみにしていたりなは嬉しくて思わず声をあげる。 『ええ、もちろんよ。新作もとっても素敵なストーリーだから期待しててね。』 朝早い図書室はりなとゆみこ先生以外誰もいない。二人だけのこの時間、りなはゆみこ先生と本の話をすることが大好きだ。司書のゆみこ先生はさすが本について詳しく、りなに向いた本もよく薦めてくれる。 キーンコーン、カーンコーン チャイムが鳴ってもりなは教室には移動しない。りなの教室は図書室なのだ。 チャイムが鳴ると、りなは図書室に並ぶ四人がけのテーブルのひとつに座り、教科書とノート、参考書を広げて勉強をはじめる。勉強する教科は時間割り通り。休み時間も昼食も学校のタイムスケジュール通り動く。教科書の内容を一人で勉強するので、理解が難しいことはあるが、もともと成績優秀なりなは参考書で調べれば大半は理解できる。どうしてもわからないときはゆみこ先生や時々見回りに来てくれる先生に聞いている。 今日もいつもの通り、勉強を進める。とくに躓くことはなく順調だ。休み時間には大好きな読書をする。給食を一人で食べ(時間のあるときにはゆみこ先生が一緒に食べてくれるが、先生もそれなりに忙しくそういう日はたまにしかない。)掃除の時間は、図書室を丁寧に掃除する。 図書室には、図書委員の子や他にもちらほらと生徒が訪れる。だが、図書室に訪れるのは基本静かな生徒が多いので、りなに何かを聞いてきたり、ちょっかいをかける生徒はいない。生徒の気配に最初は不安を感じていたりなだが、最近は安心して、慣れることができた。 中学二年生のりなは、中学1年の6月頃から学校に行けなくなり、不登校を続けていた。 三学期が終わる頃になっても学校にいけないことにたいし、親は不安を募らせ、りなも自分を責め、追い詰められていた。 そんな中、本好きなりなだから、図書室登校ができないかというカウンセラーの提案があり、りなと学校の教師、親、カウンセラー、司書のゆみこ先生での話し合いが行われた。 話し合いの結果図書室登校は認められた。 りなは入学当初から図書室に馴染みがあり、入れ替わり立ち代わり人が来て想像以上に騒がしくなる保健室よりも図書室の方が安心できるだろうとの判断があり、 またカウンセラーの後押しと両親の強い希望、そして図書室の担当のゆみこ先生が快諾してくれたことも認められた大きな要因だった。 りなにとって、図書室は今、学校で唯一安心できる居場所なのだ。
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