野良猫の生き方

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「おーい、マル、ご飯だぞ」 「ニャーオ」    俺は、いつもメシをくれる漁師に、どの猫よりも早くすり寄る。  そう、ここらの野良猫で一番強い俺は、一番乗りでメシにありつける権利があるのだ。  俺は強い。百戦錬磨の若武者マルと言えば、ここらで知らぬ猫はいない。    そんな俺は、メシを食った後、今日は見知らぬ土地へと足を向ける。  なんだか、知らない土地にも自分の力を誇示したくなってくるのだ。  それに―― 「シャァー‼」  メス猫の近くにいた、知らぬオス猫を威嚇すると、簡単に逃げていきやがった。  そう――、勝てば、手に入れれる。メシも女も。  パシーン!  おっと、女から猫パンチをくらってしまったぜ……。まぁ、よくあることだ。あの女に見る目がなかったようだ。残念だ。  俺は、逃げていく女は追わずに、ある猫を探し、歩く。この見知らぬ地のボスを――。 「おお!」  この地のボスを一目見て、電撃が体を駆け抜けた。  とある路地に入ると、猫だまりになっていて、その中でひと際体が大きい猫が威厳を発していた。  堂々たる漂う風格、顔には歴戦の傷跡。  これは――、こいつは、是非とも俺が倒してみたい!  俺は、唸り声をあげて、そいつに近づいていく。 「リンさん、そんなやつほときなって」  リンと呼ばれたやつは、とりまきの言うことはものともせず、唸り返してきて、しばし、俺らはガンを飛ばしあう。  けど、それだけじゃ、物足りない! 「ウニャー!!!!」  俺は跳びかかり、取っ組み合いになり、そして――、 俺が勝った!  負けたそいつは、そこにいた他の猫も引き連れて行ってしまった。  他のやつと仲良くするなんて、おかしなやつだ。  何で他のやつと仲良くする必要がある?  強ければ、勝てれば、何でも手にはいる。そこに、仲間なんて不要だ。  俺は、負けない。負けられない。野良猫として不自由なく生きるために。  俺は、戦い続ける。春も夏も秋も冬も――。  けど、ある凍えるように寒い日、俺は、仲間を連れて行ったリンを見て、立ち止まった。  仲間の猫と共に丸くなり、温めあい、幸せそうな寝姿に、引き込まれてしまった。  なんだか、ちょっと羨ましくなっている自分がいる。  いや、俺は、なんでも手に入れれる。暖かいものだって。  俺はいつも来る釣り人の膝の上へと向かい、飛び乗った。  ここの優先権を得られるのも、俺が一番強いからだ。 「そのこ、ちょっと見せてもらえますか?」  俺が喉を鳴らしてまったりしてると、ばばぁが、俺を抱き上げた。 (おい、俺はゆっくりしたいんだ!)  ジタバタもがいてみるが、ばばぁは顔色を変えずに俺を観察し―― 「ギャア!」 俺を狭いケースに入れやがった。 「このこ、去勢する必要があるので、保護しますね」  どんだけ暴れても出れず、出されたと思えば、一気に眠気が……。
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