4人が本棚に入れています
本棚に追加
「おーい、マル、ご飯だぞ」
「ニャーオ」
俺は、いつもメシをくれる漁師に、どの猫よりも早くすり寄る。
そう、ここらの野良猫で一番強い俺は、一番乗りでメシにありつける権利があるのだ。
俺は強い。百戦錬磨の若武者マルと言えば、ここらで知らぬ猫はいない。
そんな俺は、メシを食った後、今日は見知らぬ土地へと足を向ける。
なんだか、知らない土地にも自分の力を誇示したくなってくるのだ。
それに――
「シャァー‼」
メス猫の近くにいた、知らぬオス猫を威嚇すると、簡単に逃げていきやがった。
そう――、勝てば、手に入れれる。メシも女も。
パシーン!
おっと、女から猫パンチをくらってしまったぜ……。まぁ、よくあることだ。あの女に見る目がなかったようだ。残念だ。
俺は、逃げていく女は追わずに、ある猫を探し、歩く。この見知らぬ地のボスを――。
「おお!」
この地のボスを一目見て、電撃が体を駆け抜けた。
とある路地に入ると、猫だまりになっていて、その中でひと際体が大きい猫が威厳を発していた。
堂々たる漂う風格、顔には歴戦の傷跡。
これは――、こいつは、是非とも俺が倒してみたい!
俺は、唸り声をあげて、そいつに近づいていく。
「リンさん、そんなやつほときなって」
リンと呼ばれたやつは、とりまきの言うことはものともせず、唸り返してきて、しばし、俺らはガンを飛ばしあう。
けど、それだけじゃ、物足りない!
「ウニャー!!!!」
俺は跳びかかり、取っ組み合いになり、そして――、
俺が勝った!
負けたそいつは、そこにいた他の猫も引き連れて行ってしまった。
他のやつと仲良くするなんて、おかしなやつだ。
何で他のやつと仲良くする必要がある?
強ければ、勝てれば、何でも手にはいる。そこに、仲間なんて不要だ。
俺は、負けない。負けられない。野良猫として不自由なく生きるために。
俺は、戦い続ける。春も夏も秋も冬も――。
けど、ある凍えるように寒い日、俺は、仲間を連れて行ったリンを見て、立ち止まった。
仲間の猫と共に丸くなり、温めあい、幸せそうな寝姿に、引き込まれてしまった。
なんだか、ちょっと羨ましくなっている自分がいる。
いや、俺は、なんでも手に入れれる。暖かいものだって。
俺はいつも来る釣り人の膝の上へと向かい、飛び乗った。
ここの優先権を得られるのも、俺が一番強いからだ。
「そのこ、ちょっと見せてもらえますか?」
俺が喉を鳴らしてまったりしてると、ばばぁが、俺を抱き上げた。
(おい、俺はゆっくりしたいんだ!)
ジタバタもがいてみるが、ばばぁは顔色を変えずに俺を観察し――
「ギャア!」
俺を狭いケースに入れやがった。
「このこ、去勢する必要があるので、保護しますね」
どんだけ暴れても出れず、出されたと思えば、一気に眠気が……。
最初のコメントを投稿しよう!