冷たい背中

桜子のモノローグ

　座間先生？
　はい、もちろん覚えていますよ。

　双子座流星群の夜？
　あっ、そうそう。
　先生とキャンパスの丘で観ました。

　そこで、先生と。
　ええ、とってもびっくりしましたよ。

　先生ったら突然なんですもの。

　私、初めてだったんですよ、あのときが。大切なヴァージンを捧げちゃいした。

　だから緊張というか、どうしたらよいかわからなくて、最初はただただじっとしていました。

　そして、なすがままというか、先生にお任せ状態でした。

　でも、一生懸命な座間先生、とっても可愛らしかったです。

　サイズも可愛らしかったですけどね。

　あっ、これは失礼かな(笑)

　乱暴されたのでは？
　いえいえ、そんなこと全然ないですよ。

　主人なんかよりもずっと優しく愛してしてくれましたよ。　
　あっ、これはオフレコでお願いしますね。

　背中が冷たいだろうって、騎乗位っていうんですか、途中からは自分がずっと下になってくれていましたし。

　二重人格？

　うーん、本当ですか？

　そんな風に思ったことは一度もなかったですけど…。

　私、あの頃、座間先生のことちょっと好きでしたから、良い記念といいますか、思い出になりました。

　先生がいつも淹れてくれた深煎りの珈琲、とっても美味しかったんですよ。銘柄はは忘れちゃいましたが大人の珈琲って感じがしました。

　今はすっかりハワイのコナコーヒー派ですけど。

　研究室での作業が終わるとよく食事もご馳走してくれていました。

　ファザコン？

　いやいやいや、ないです。
　主人、私より年下のサーファーですです。

　あのまま日本に居たとしたら、もしかしたら付き合ったりもしたかもしれませんけど、
　歳の差がありましたし結婚とかはないんじゃないですかね。

　そう、思い出した。
　あの日は直接お会いしてお別れの挨拶をするつもりだったんです。

　両親が急に仕事の都合でハワイに移住することになり、私も着いていくことになりましたから。

　憧れのハワイ生活を満喫、みたいな感じで浮かれていたせいもあったのかもしれませんが、ほら、突然あんなことになっちゃったので、肝心なことを伝え忘れちゃいました。

　あぁ、探偵さんと話していたら、なんだか先生に久しぶりに会ってみたくなっちゃいましたよ。

　あっ、これも主人にはオフレコでお願いしますね。

　ハワイ在住
　桜子・デービス(旧姓藤田)