ヤンキー彼氏の大きすぎる偏愛

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 話題を変えようと思ったが、睦は手を組んで身を乗り出してこちらを覗き込んでくる。 「……八戸さんも年、気になりますか?」 「まあ……、気にならないって言ったら嘘になるけど」  オブラートに包もうとする八戸を睦は直球で斬り込んでくる。 「俺があんま触らせてもらえないのは、俺が年下だからですか」 「え……」 「俺が未成年だから、遠慮してるんすか」  八戸と睦の間に沈黙が流れ、それを埋めるようにアイドルたちの歌声が虚しく響いた。八戸はリモコンでテレビを消すと、隣に座る彼に体を向けた。 「あのね、睦くん。前も言ったけど、俺は君が思うほど出来た人間じゃないよ。確かに君に触れられるのを避けてしまったけど、そんな高尚な理由じゃなくて……その……」  口ごもる八戸に睦は不安そうな目を向けてくる。耳が熱くなるのを感じながら、八戸は胸の内を打ち明けた。 「恥……恥ずかしいんだ……」 「なにが恥ずかしいんすか?」 「君に全てをさらけ出すのが」  我ながら恥ずかしすぎるセリフである。しかし睦はきょとんとして何度か瞬き、八戸の言葉の続きを待っている。八戸はその視線から逃れるように俯いて、黙るしかなかった。しばらくして睦の少し戸惑った声が返ってきた。 「……もしかしてそれだけっすか?」 「それだけって言わないでよ……」 「す、すみません。俺、てっきり……八戸さんはそういうの慣れてると思ってたから」 「慣れてないよ。恋愛とか……久しぶりすぎて困ってるんだから」  視線を落としたままでいると、ベッドが軋んだ。膝先に睦の膝が触れた。吐息がかかるほどの近さに彼がいる。 「キスも恥ずかしい?」 「……それは大丈夫」  答えた瞬間、唇が触れた。条件反射で上がった手を睦に握られる。  軽いキスがあっという間に深くなった。睦の性急な口づけに、八戸も負けじと応戦した。八戸だってずっと睦に触れたかった。三日前に吐き出せなかった熱がずっと身体の中に渦巻いている。もつれるように小さなベッドに押し倒される。 「……む、むつきゅん」 「なに?」  少し荒っぽい返答を寄越した睦は性欲むき出しの鋭い目を向けてきた。その迫力に思わず息を呑む。睦は首にキスをしてから、鼻先が触れるほど近づいてくる。 「嫌?」 「嫌じゃないけど、その前に……」  今度こそ、ウケしかできないと伝えなければ。  しかし、起き上がろうとする八戸を阻止するように押し返してくる。 「ちょっとむつきゅん……起き上がれないんだけど」 「だって八戸さん、すぐ逃げようとするじゃん」  むつきゅん、顔が怖い。  八戸は諦めて身体の力を抜いて仰向けで寝転がった。 「なあ、八戸さん。目、瞑って」  言われた通りに瞼を閉じた。視界を遮られた中で、着ていた麻のシャツのボタンが外されていく。普段ならちょっと待てと言ったかもしれないが、なぜか目を閉じているだけで落ち着いて状況を受け入れられた。 「この間、八戸さんイかせられなかったの、結構ショックでさ。色々調べたんすよね」 「だからあれは、むつきゅんのせいじゃなくて……」 「ほら、八戸さん目閉じてって」  反論しようと目を開くと自分にまたがった睦があやすように視界を遮ってくる。八戸は口と目を閉じるしかなかった。 「目が見えない方が敏感になるらしいんで」  首に濡れた感触がした。睦が音を立てながら口づけている。時折、軽く吸われて跡が残らないかどぎまぎしてしまう。  そちらにばかり意識をしていると、服越しに乳首を擦られ、驚いて身体が揺れた。 「……んっ」  思わず漏れた声に首元で睦が笑うのが分かった。 「やっぱ八戸さんって感じやすいっすよね。前も思ったけど」 「なっ……!」  顔が一瞬で熱くなった。条件反射で目を開くも、睦の嗜めるような視線で再び言葉を飲み込んだ。
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