私達は家族じゃない

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私達は家族じゃない

湯気は今目の前にある家族の顔をユラユラと歪ませる。 この家族は私の本当の家族ではない。 そのことに気付いたのは最近のことだ。 私は、記憶を取り戻したのだ。 私の一番古い記憶は、病院で目を覚ました時の記憶だ。 目を覚ますと、心配そうに男女が覗き込んでおり、目を開けたとたんに彼らは口々に「よかった、よかった」と喜んで私の手を握ってきたのだ。 あなた達は誰? 幼い私は不安で泣いた。 代わる代わる私を抱きしめて宥めてくるけど、私はあなた達を知らない。 今まで、これは私の夢の記憶だと思っていた。 父と母曰く、私は幼い頃、キャンプに行った川で誤って足をすべらせて深みに嵌って溺れたと聞いた。 病院に運ばれ、意識を取り戻した時の記憶だと教えられた。 だが違う。 あの漠然とした不安はなんだったのか。 最近になってようやくわかった。 私は、本当の家族のことを思い出したのだ。 ご飯の湯気の向こうから私を見る者の口が動く。 「どうしたの?早く温かいうちに食べちゃいなさい」
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