第一章 バンドって…

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第一話 できること 「えぇ…バンドのメンバーを集められないって私にいわれてもなぁ。私はエレナにスカウトされただけだし…何より私がもともとギター好きだったって事もあるよ?理沙都(りさと)はどうなのよ。」 ソファーに足を組んで座っている桃香(とうか)は理沙都の肩に手を回した。理沙都の顔が次第に赤くなる。耐えきれなくなったのか、理沙都は真っ赤な顔を見せないようにうつむきつつ、閉ざされていた口を開いた。 「わ……私はお姉ちゃんのライブを見て…やってみたいって思っただけだよ…。ただ…かっこよくて…華麗で…。とても…きれいだったの…。」 うつむく理沙都に対して、桃香は声をかけることができなかった。恥ずかしかったのか、理沙都は机にあったスマホを拾い上げると、そそくさと自分の部屋に戻っていった。桃香は声をかけようと咄嗟に立ち上がったが、一度動きを止め、すぐにスマホを取り出した。そして何か熱心に文字を打っていった。 翌日の朝。その日は土曜日だったため学校もなく、理沙都は一人本屋に向かった。温かい春の日差しが本屋の窓からかすかにこぼれ落ちる。理沙都が真っ先に向かったのは、音楽関連のコーナーだった。そして棚の中の本を一つずつ手に取り、確認していった。少し下の方にあった本を手に取り、顔を上げようとすると、後頭部を何かにぶつけた。理沙都は持っていた本を落とし、後頭部を手で包み込み、プルプルと震えてしゃがみこんだ。ぶつけられた女子高生は理沙都の頭が頬に当たったのだろう。少し焦った様子で頬を擦りながら、理沙都に声をかけた。 「ごっ…ごめんなさいっ!大丈夫…ですかぁ?」 本屋の外にあるベンチに二人は座っていた。お互いに買った本を抱えている。 「さっきは本当にごめんねぇ…。私の不注意で…えへへ…」 照れ臭そうに目を細めて頭を掻いた彼女の髪は美しい緑色で、まるで春の木漏れ日に映える若葉のようだった。 「あっ…いや…大丈夫です。……あの。有木川(ゆうきがわ)学園の人…ですよね?お名前は……?」 あたふたとしながらも理沙都は聞いてみた。なぜ学園名がわかったのか。それは制服を着ていたためだ。理沙都も同じ学園に通っていることもあり、この辺ではよく見かける制服だ。 「私は芹香だよぉ。丸西芹香(まるにしせりか)って言うんだ〜。えーっと…あなたは……花館理沙都(はなだてりさと)さんだっけ?ああ、ほら。2年D組の。」 理沙都は驚きを隠せないようで、目を丸くして芹香を見つめた。なんで知っているんだ。そう思った理沙都は、色々訪ねてみることにした。 「え…えっと。芹香…ちゃんだよね。芹香ちゃんは、なんで私の名前がわかったの…?」 芹香は持っていた手帳をパラパラとめくれば、あるページを開いてみせた。そこには学園の生徒全員の名前が書かれていた。それを覗き込むように理沙都は顔を近づけた。 「ふっふーん…驚いちゃだめだよぉ?私はこれでも生徒会の書記でねぇ。各クラス、誰がいるのか。誰が誰なのかっていうのを全部記憶しているのさ〜!」 えっへんと胸を張る芹香に理沙都は「お〜」と小さい歓声と拍手を送った。だから私の事を知っていたのか。理沙都はホッと胸をなでおろす。それを見た芹香は、理沙都の買った本を見て、訪ねた。 「んー?ギター練習の心得ぇ…?りーちゃん、ギターやってるの?」 初めてりーちゃんと呼ばれ、反応が遅れてしまった理沙都だったが、すぐに笑顔になった。 「う…うん。お姉ちゃんのおさがりを使ってるんだ。でもまだ始めたばっかりで…。私、お姉ちゃんみたいになりたくてギターを始めたんだ…。」 照れているのかだんだん声量が小さくなり、最後の方はボソボソとつぶやいているようにしか聞こえない声量だったが、それでも芹香は理解したようだった。芹香は目を閉じ、んー…と考えたあと、片目を開けて理沙都を指差した。 「りーちゃんって……Night Roarのトーカの妹じゃな〜い?ほら。トーカの本名、花館桃香でしょ?花館って同じ苗字じゃない。しかも髪色も似てるし〜。」 あっさり言い当てられた理沙都は驚きと恥ずかしさのあまり、顔を真っ赤にしてうつむいた。その反応を見た芹香はクスクスと笑って語り始めた。 「実は私、バンドに興味があるんだよ〜。中学までピアノを習っててねぇ。そこからやる事が決まらなくなっちゃってぇ…。自分自身も何をしたらいいのかなぁってなっちゃった。そこでナイロアのライブが目に入ってねぇ。キーボードを弾いているナナさんがかっこよくて。私も弾けるかなぁって思ったんだよ〜。」 にまーっと笑う芹香に、理沙都は何か響くような感覚がした。そうだ。私はこの子と同じ思いを抱いているんだ。ついに決心したのか、理沙都は自分のありったけの力を振り絞り、バッと力強く芹香の手を握りしめた。あまりに突然の事で、芹香が「おぉ。」と小さな声をあげた。理沙都が少し恥ずかしげに笑う。 「芹香ちゃん。い…一緒にバンド…やってくれるかな…!」 ダメ元で聞いてみた。ああ。絶対断られちゃうよな。そう思った理沙都だったが、芹香は驚きつつ、握りしめられた手を握り返した。 「えっ…私なんかでいいなら全然大丈夫だよ〜!私もりーちゃんと演奏したいって思ってたんだぁ。」 満面の笑顔を返す芹香。その顔を見て安心したのか理沙都の目からは自然と涙が流れた。泣いていることに気づいた芹香は、あはは、と苦笑いをすれば、理沙都の背中を撫でた。 「泣かない泣かない〜。なぁに?そんなに嬉しかったの〜?」 理沙都は赤くなった目を擦り、すぐに笑顔を作った。 「本当に…ありがとう。芹香ちゃん。」 芹香と別れて家に帰った理沙都は、部屋に飛び込んだ。すぐに買ってきた本を読みながら、おさがりであるギターをぎゅっと抱きしめる。よくわからない文字の並び。音符の嵐。記号の波に頭をこんがらせながらも、理沙都は熱心に練習した。なんとか簡単な譜面を読めるように。そして弾けるようになった頃には、すっかり日も暮れて、美しい三日月が空を仰いでいた。理沙都はそんな月を窓越しに眺めながら、練習を続けた。 翌日。理沙都は芹香と共に駅に向かった。今日は隣町のライブハウスで練習を行う予定だ。駅のホームに向かうと、背負っていたギターバックをヒョイと下げ、中身を確認した。 「おお〜…りーちゃんギタリストっぽいねぇ。雰囲気あるよ〜?」 クスクスと笑う芹香。自然と理沙都も笑顔になる。これが「仲間」っていう暖かさなんだ。そんな事を思っているうちに、電車が来た。二人は電車に乗り込み、席に座った。 「いやぁ…ライブハウスに練習目的で行くって…初めてだよ。ね!りーちゃん!……りーちゃん?」 芹香がキョトンと理沙都を見ると、理沙都は熱心にスマホを触っていた。芹香がスマホを覗き込むと、そこには”Night Roar”のメンバーが描かれたポスターと、次のライブ日程が表示されていた。理沙都は小さい時から姉の背中を見て育ったため、ライブは欠かさず見に行っているのだ。次のライブは今向かっているライブハウス「RockRiver」で行うらしい。 「へ〜…今度ナイロア、RockRiverでライブなんだね。えっ、今夜!?ねぇねぇりーちゃん!見ていこ!いいよねぇ!?」 グイグイと寄って、席の幅を狭める芹香。どうやら芹香もNight Roarのファンらしい。そこまでグイグイ来られると断れないと思ったのか、理沙都は「ちょっと…。わかったから…狭い…」というように手を胸の前で開いた。あっさり離れて、あはは〜と無邪気に笑う芹香。すると電車が止まった。二人が扉に目を向けると、ギターバックを持った大人っぽい女性が乗り込み、二人と一席開けて隣に座った。二人は気になるようで、その女性をまじまじと見つめた。その女性は、腰辺りまである長い髪をサラリと撫でると、視線に気づいたのか振り向いて、ひらひらと笑顔で手を振った。 「え…えっと………その…すいまs…」 「おねーさんギターやってるの〜!?それともベース!?どっちでもいいけどぉ、色々おしゃべりしましょうよ〜!」 声をかけようとした理沙都より速く、芹香が女性へ距離を詰めた。少しびっくりしたのか、女性は一瞬、ギターバックを盾のように持ったが、すぐに下げて笑顔になった。 「あっ…!!まさかあなたは…!!!」 芹香が手帳をパラパラとめくる。これは同じ学園の人なんだな。と理沙都は察したようだ。パシっとページを開けば、芹香はドヤ顔で訪ねる。 「あなた……2年A組の、大庭和香奈(おおばわかな)さんじゃない?」 「さっきこの子が言った通り、私は大庭和香奈。有木川学園の二年生だよ。趣味でベースをやっているの。」 和香奈はバッグを愛おしく抱きしめた。どうやらベーシストらしい。 「そうなんだね。私達と同い年なんて思わなかったよ…!大人っぽいし…。」 理沙都が肩にかかる髪をくりくりといじりながら呟く。その姿を見た和香奈はクスリと笑い、 「あら、そうかしら。ありがとうね。でも二人とも十分大人っぽいと思うわ。」 と答えた。大人っぽいと褒められて嬉しいのか、芹香の顔が緩む。そこを理沙都がすかさず小突いた。 そうこうしているうち、駅についたようだ。三人は席を立ち、改札口に向かった。改札口を出たところで、和香奈が話しかけた。 「えっと、二人はここからどこに行くの?私はライブハウスでちょっと弾いて、カフェに行こうと思ってるんだけど…。」 「え…っと、私達もライブハウスで練習しようと思ってて…。そのままNight Roarのライブを見て帰ろうと…。」 「あっ、そうなんだ!多分ライブハウス同じだから、一緒に行かない?もちろん、ナイロアのライブも見ていくわ!」 手を合わせてニパッと笑う和香奈。理沙都は芹香の顔を見た。芹香も大丈夫そうだ。 「はい…!ぜひ一緒に演奏しましょう!」 「やったね〜!ねぇ、りーちゃん!かなりんをさ、バンドに誘ってみたらど〜よ〜?」 グイグイと顔を近づける芹香。当の理沙都は、突然の事で「あっ…え…ちょ…あの……。」としどろもどろ状態だ。そこに和香奈が二人の頭に手をぽんと置いた。 「なぁに?バンド?私は別に構わないわよ?…というか、”かなりん”って…私の事?」 目を細めて顎に手を当てる。芹香はぱぁっと笑って、手を広げた。 「そうだよぉ!和香奈の”かな”を取って、かなりん!!可愛いでしょ〜?」 「っはは、芹香ちゃんはあだ名をつけるのが上手だなぁ。理沙都ちゃんにもりーちゃんってつけてたもんね。」 芹香の頭を撫でる和香奈の隣で、理沙都はまだあたふたしている。多分状況の整理ができていないのだ。理沙都の行動に気づいた和香奈は、少し膝を曲げ、理沙都に目線を合わせた。 「理沙都ちゃん。私、あなた達のバンドに入ってもいいかな…?何か…あなた達といると、楽しいのよ。もしだめなら、別に大丈夫なんだけど…。」 理沙都は目を大きく開いた。今まで、自分と一緒にいて楽しいなんて、言われた事がなかったのだ。今まで理沙都は引っ込み思案で、特に目立つ事もなければ、問題を起こすこともない。友達と呼べる子もそこまで多くなかった。そんな自分に、一緒にいて楽しいと言ってくれたのだ。この人なら…任せられる…。理沙都は和香奈の手を取った。 「もちろん…!!断りなんてしないよ…。ぜひ入ってほしい…!!」 その言葉を聞き、和香奈の顔がぱっと明るくなる。 「ほんと…!?ありがとうっ!!」 和香奈が手を力強く握りしめる。三人は自然と笑顔になった。 「そんじゃあ、ライブハウス行こっか〜!!」 芹香が二人の肩を持ち、歩き始めた。 気づかなかっただろう。遠くから見つめる2つの影があったのを。 駅から3分ほど歩いたところにあるライブハウス「RockRiver」は、練習場所としても活用できるようで、もちろん、ライブを行うこともできるが、今日は無料開放中らしい。到着するやいなや、芹香は感嘆の声をあげた。 「っうわ〜…!!ひっろ〜い…!!」 その光景に少し引きつり気味な笑みを浮かべた理沙都だったが、和香奈はクスクスと笑っている。 「いらっしゃいませ!!今夜はNight Roarのライブが入っておりますので、16時までの使用となりますが、よろしいでしょうか?」 カウンターから元気の良い明るい声が聞こえてきた。ここのスタッフらしい。 「あ…はい。大丈夫です…。」 理沙都は少し戸惑いながらも返事をした。 「了解しました…って和香奈じゃない!いつもどうも!!…この子達は友達??」 えっ、と小さな声をあげる芹香。理沙都は和香奈とスタッフの顔を交互にキョロキョロと見る。 「あー…うん。今日初対面なんだけどね。実は同じ学園の子達なの。紹介するわ。花館理沙都さんと、丸西芹香さん。二人とも私とタメよ。」 「わぁ!!そうなんだ!!二人ともこんにちは!私は六川智美(ろくがわともみ)!よろしくね〜!」 二人に向けてフリフリと両手を振る智美。すげぇ人だな…と二人は思っただろう。 「とりあえず、3号室借りるね。他の部屋借りてたりする?」 「あー、2号室は借りられてるから注意だよ。あの青髪の子だから…。余計にね。」 最後の方はひっそりと和香奈に耳打ちした。和香奈が「ああ…あの子ね…」というように苦笑いする。しかし、理沙都には聞こえていたようだ。青髪の子…?理沙都は頭の中で首を傾げた。 和香奈が鍵を受け取ると、三人は部屋に向かった。練習部屋は思ったより広く、設備も充実していた。理沙都は自分のギターを取り出した。姉の雰囲気がまだ残るこのギターで、姉を超えるのだと思うと、今からでもワクワクする。和香奈もベースを取り出し、軽く弾き始めた。芹香はもともとここにキーボードがあると言い、部屋の隅にあったキーボードを弾き始めた。二人ともすごいな。そう思った理沙都は、自分一人で練習を始めた。 「ねぇねぇりーちゃん。バンドやるってもさ、ボーカルはりーちゃんやるの?ギタボなの?」 ギタボ…?理沙都は頭に?が3つくらい浮かんだ。 「バンドって大体、ギター、ベース、ドラム、キーボード、ボーカルで成り立つはずだよ。で、りーちゃんがギターをやるなら、ギタボかもう一人ボーカルの人を探さないといけないんだ〜。どーするの?」 理沙都はうー…と低く唸って頭をかいた。ボーカルならできるかもしれないけど、リードギターは難しいよな…。すると和香奈がパチンと指を鳴らした。 「理沙都ちゃんは、ギタボが似合うと思うな。だって、いい歌声してるもん。しかもお姉さんのギターがあるなら、それを使ってお姉さんを超えられるでしょ?」 そうだ。理沙都は思った。目標とする人がギターであるなら、ギターで超えなければ意味がない。でも、ギターを弾きながら歌うなんて…できるのだろうか。そう思いながらも、耳コピをしたNight Roarの楽曲を演奏した。 歌ってみれば案外歌えるもので、ギターもそれほど難しくはなかった。これなら行けるかも…!そう思っていると、力強くドアがノックされた。あまりに突然の事で、三人は静まり返った。バンッと力強くドアが開けられた。そこに立っていたのは、青髪の小柄な少女だった。髪はクセが強く、前髪の左側には黄色のメッシュが入っている。いつもは冷静な和香奈の顔が、どんどん青ざめていく。理沙都は冷や汗が頬を伝って流れるのを感じた。小柄なのに、ここまで威圧を感じたことは今まで一度もなかったからだ。少女は片手をポケットに。片手にドラムのスティックを持ったまま、堂々と近寄ると、理沙都をキッと睨みつけた。 「あんた…それきちんと音出てんの?」 「へ…?」と声が出なくなる理沙都。その足は小刻みに震えている。少女はさらに追い打ちをかけるかのように、理沙都との距離をグイッと近づけた。 「きちんと音が奏でられてないって言ってんの。あんたそんな事もわかんねぇのか?」 芹香も威圧を感じたのだろう。手が震えている。 「ご…ごめんなさい…。私まだ初心者で…始めたばかりなんです…。」 理沙都は恐怖を感じながらも、震える声で答えた。少女はスティックを肩にかけ、はぁ…と大きなため息をついた。 「初心者が来るとこじゃねぇぞ。ここは。練習してから来いってんだ。」 少女はプイと背を向け、部屋を出ていった。理沙都は声も出なくなっており、ただギターを抱きかかえることしかできなくなっていた。芹香と和香奈も、そんな理沙都をただ見ていることしかできなかった。ぐっと拳を握りしめた理沙都は、頭によぎった言葉を口に出した。 「私にできることって…なんだろう…」 やがて日は暮れ、RockRiverには、大勢の人が行き交った。入り口には大きなポスターが貼られ、そこには「高らかに吠えろ」というキャッチコピーと、Night Roarの5人のシルエットが描かれていた。理沙都達は、あの少女に言われた事が心に残り、まだ必死に練習していたのだ。スタッフである智美も焦っていたが、三人は聞く耳を持たなかった。 せかせかと廊下で支度をする智美が隣を通った女性達にハッと気づく。その女性達は全員、溢れんとばかりのカリスマ性があり、リーダーと思われる金髪の美少女は、サイドテール寄りのポニーテールで、耳には金色のイヤリングをしている。廊下を歩き、3号室に向かうその女性達に、智美は咄嗟に声をかけた。 「あのっ!!すいません、今そこ使ってる子達がいて…!!今すぐ退出させま…」 「no problem. 問題ないよ。」 金髪の美少女はフッと笑い、顔にかかる横髪をサラリと撫でた。他の4人も優しく微笑む。そして、3号室の扉をゆっくり開けた。中にはまだ練習中の三人がおり、理沙都目を丸くした。芹香が「っ!?」と外見からもわかるくらい驚いている。和香奈は「あら…もうそんな時間…?」と時計を見上げる。 「えっ、理沙都!?なんでここにいるの!?」 金髪の美少女の後ろから見覚えのあるピンクの髪色の少女が顔を出した。そう。桃香である。理沙都は鳴らしていたギターをすぐに止め、桃香に近寄った。 「お…お姉ちゃん!?ってか……皆さんは…!!ナイトr…」 「っうわあああああ!?!?Night Roarの皆さんじゃないっすかああ!!どどど…どーしよおお!!!」 理沙都が言い終わる前に、芹香が大声をあげ、ぴょんぴょこ飛び跳ねながら部屋をぐるぐる周る。それを見る理沙都の目が点と化す。金髪の美少女は、こほんと一息をおいた。 「W...Well……Hello,Every one.さっきその子が言った通り。私達がNight Roar。私はリーダーの…」 「エリーさん!!本名は金島(かねしま)エレナさんですよね!!バンド活動にとてもストイックで、ラップ作りもお手の物ですもんね!!それとトーカさん!!本名は花館桃香さん!!りーちゃんのお姉さんで、いっつもギター、めっちゃかっこいいです!!他の皆さんの紹介もできますよっ!!」 エレナが言い終わる前に、芹香がキラキラ…というより、ギラギラした目でエレナと桃香を見つめた。視線がとても熱い。というか、逆に怖い。 「はいはい…芹香ちゃん。その辺にして……。」 芹香の熱い視線を遮るかのように、和香奈が仲裁に入った。むぅと頬を膨らめる芹香。どうやらNight Roarの熱狂的ファンらしい。 「わぁ!あたし、こういう子大好き!なぁに?皆の紹介できるんだぁ!すご〜い!他の皆の紹介もできるのっ!?」 二人の隙間から出てきて、キャピッとポーズを取るツインテールの少女。この少女もキラキラとした目で芹香を見る。芹香は少女の隣にぴょんっと飛び、エヘンと胸を張れば、自信満々に語り出した。 「はいっ!もちろんです!!こちらのツインテールの方は、Night Roarのアイドル的存在!ノドカさん!本名は、仁沢悠(じんざわのどか)さんです!!ベース担当で、Night Roarの楽器点検はお手の物!!可愛い物が大好きなんですよね!!」 悠はぱぁっと笑顔になり、両手を合わせて微笑む。どうやら完璧のようだ。続いて芹香は赤髪の少女の隣に立った。 「こちらの可愛らしい女性は、Night Roarのお姉さん的存在!イッシーさん!本名は、石渕茜(いしぶちあかね)さんです!!ドラム担当で、座右の銘は、流行の最前線を行く美少女”です!!髪飾りを作るのが趣味ですよね!!」 茜はえへへと頭をかく。どうやら恥ずかしいらしい。それをエレナがすかさず小突く。茜の顔がさらに赤くなった。そんな光景に目をやりながらも、芹香はオレンジ色の髪の少女の横ではなく、目の前に立った。 「こちらの方はっ!!私の目標とする大先輩!Night Roarの名付け親!ナナさん!本名は、桐島奈菜美(きりしまななみ)さんです!!キーボード担当で、バンド活動の他に、写真家見習いとして、美しい写真を取っているんですよね!!めっちゃソンケーしてますっ!!」 奈菜美の前でギラギラと目を輝かせている芹香。奈菜美はあまり驚かず、「おー。ありがとねー。」と微笑んだ。理沙都と和香奈は、芹香の熱気に押しつぶされそうになったが、なんとか持ちこたえていた。和香奈はもうフラフラとして、今すぐにでも倒れそうだ。理沙都がなんとか和香奈を支えている。 楽器の片付けが終わり、部屋から出ようとしていた理沙都にエレナが話しかけた。 「Hey,トーカの妹ちゃん。あなたもバンドをやるの?トーカから聞いたわ。いつか私達を超えるってね。あなた達がどんなバンドになるか…楽しみにしておくわ。いつかこの場所で一緒にライブができる事を願っておくわね。あと…。できる事を、精一杯やればいいと思うわ。Good Luck!」 笑顔でピースをし、ウィンクをするエレナ。理沙都の口から「はいっ!」と自然と大きな返事が出た。芹香が「いいなぁ…」と羨ましげに見つめる。そんな芹香の頭を和香奈がワシャワシャと撫でた。理沙都の目には、Night Roarという大きな壁と、姉の大きな背中が見えた。いつか。このバンドを超えてみせる。そんな感情が理沙都の心に芽生えた。 そして三人はNight Roarのライブを楽しんだ。いつか超えるべき相手のライブは、とても大きく感じた。ライトが光り輝き、照らされた5人の目はキラキラと輝いていた。自分たちも同じ舞台に立ってみたい。自分がギターを始めるきっかけとなった感情と同じだった。芹香も和香奈も。きっと同じことを感じただろう。理沙都の顔は、自然と引き締まった。これまでの理沙都のイメージをかき消すかのごとく、決意を示した表情でステージの上に立つ5人を見つめるのであった。 ♪次回予告♪ どっ…どうも!今回の次回予告担当、花館理沙都です!えっと、ここまで読んでいただいてありがとうございます!次回は、私達にもう二人仲間が加わります…!えっ、私が倒れる!?まさかそんな…冗談はやめてよね。芹香ちゃん……って、ええ!?ホントなの!? 次回!「もうやらないって決めたの」 お楽しみに…です!!
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