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第二話 もうやらないって決めたの
Night Roarのライブを見終わった三人は、駅に向かった。芹香の持つ橙色に光るサイリウムには、「ナナ♡love」とシールが貼ってある。
「いやぁ…やっぱナイロアは最高だよ〜!!っははは!!」
はしゃぎすぎたのか、さっきまで綺麗に整っていた芹香の髪型は、ボサボサになっていた。「髪直す?」と和香奈がクシを差し出している。二人の隣で歩いていた理沙都は、うつむいたままギターケースを背負い直した。
(きちんと音が奏でられてないって言ってんの。あんたそんな事もわかんねぇのか?)
青髪の少女の声が頭をかけめぐる。少女の凍てつくような目。威圧感のあるあの態度。思い出しただけでも寒気がしそうだ。しかし、そんな事を思い出している場合ではない。理沙都はグッと拳を握り締めれば、前を見つめ直した。
「ところでさ、練習中にきたあの青髪の子は一体何なの〜?怒ってたし…。あとさ、あの子……私達と同じ学校の子だよねぇ…?えーっと名前は確か〜…」
「島川葵…。」
髪を直した芹香が手帳を取り出す前に、和香奈がボソッと名前を告げた。芹香の手が止まり、「えっ…」と小さな声をあげる。理沙都はその横で首を傾げた。
「私と同じクラスの子でね…。母子家庭だから、色々ストレスが溜まりやすい子なんだって。ドラムを始めたのもそれがきっかけ。ストレス発散…ってやつよ。」
駅のホームで和香奈はうつむきながら話した。どうやら葵は三人と同い年の高校生で、父親を幼いうちになくしてしまったらしい。その影響か、気の強い性格になったのだ。だからあんなに威圧感があったのだな。と理沙都は心の中で解釈した。
「どうりで…練習中にもドラムの音が聞こえるわけだね…。でもどうして私達のとこにきたんだろう…。これもストレス…だったのかな…。」
理沙都が心配そうに言った。他の二人も心配そうに理沙都を見つめる。そこから少し経てば電車が到着し、三人は電車に乗り込んだ。
景色がどんどん過ぎ去っていく。そして、揺れる電車の中で和香奈が口を開いた。
「ね…ねぇ理沙都ちゃん、芹香ちゃん。明日なんだけど、昼休み空いてるかしら…。少しバンドの事を話しておかない?ね…?」
理沙都と芹香はお互いに顔を向かい合わせた。そして軽く頷いた。
「はい…もちろんです…!」
「もちろんだよー!」
二人とも元気よく返事をした。和香奈の顔も自然と笑顔になった。電車が止まり、和香奈が手を振りながら降りていく。理沙都と芹香は笑顔でそれを見送った。再び電車が発車したときには、もう日もすっかり暮れ、きれいな三日月が空に悠々と佇んでいた。二人は電車に揺られていた。さっきまであった人混みはなくなっており、電車の揺れる音とアナウンスが響く。
「そういえば……楓がギター…やってた気がする…。」
ポツリと理沙都が呟いた。今までうつむいていた芹香の顔がゆっくりと上がり、理沙都を見つめる。
「楓って……D組の学級委員長の子だよね〜…?名前は……川井楓さんだっけ?そっかぁ、りーちゃんと同じクラスだっけ。ギターやってるの〜?」
理沙都の頭に、笑顔でギターを弾いていた楓の顔が思い浮かぶ。薄い茶色で、黒いリボンで結ばれている長い髪。昔見せた、あの優しい笑顔……今は………。
「楓…中学の時、ギターをやっていたんだ…。でも…気がついたらやめてたんだ…。」
「じゃあ声かけてみようよ〜!入ってくれるかもしれないじゃ〜ん?」
いつも通りにまーっと笑う芹香。理沙都は芹香の顔を見つめると、自然と笑顔になった。
「それじゃ〜また明日ね〜!」
「うん。明日。」
フリフリと手を振って、芹香と理沙都は背を向けて帰っていった。理沙都が家に帰ると、母親が夕飯を作って待っていてくれた。理沙都は席に付けば、ゆっくりと夕飯を食べ始めた。
「どうだった?練習は。友達もできたらしいね。楽しかった?」
夕飯を食べながら理沙都は頷いた。しかし、その顔に笑みはなく、ただ頷いているだけだった。夕飯を半分くらい食べたくらいで、ドアが開く音がした。桃香が帰ってきたのだ。しかし理沙都の顔色はそのままで、暗く沈んでいる。その横を何事もなく桃香は通り過ぎ、ギターケースを置けば、食卓の席についた。理沙都はそんな事を気にもせず、ただ夕飯を黙々と食べている。
「ところでさぁ、理沙都?なんか沈んでんね??…ん〜!!この唐揚げおいし〜!!」
唐揚げをほおばっている桃香は、リスのようだ。理沙都はそれを見てくすくすと笑いだした。笑った理沙都を見た桃香はホッとして、机に身を乗り出した。
「なんかすごい練習頑張ってたじゃん??お姉ちゃん嬉しくなっちゃうよ〜。なんかあったの??」
「ああ…いや、なんにもないよ。大丈夫。気にしないで…。」
理沙都は軽く笑顔を作れば、「ごちそうさま」と挨拶をし、食器を運んでいった。桃香はその背中をどこか悲しげに見つめていた。
翌日。理沙都は、いつものように学校に登校した。昇降口に着くと、薄い茶髪の長い髪をクシでとかしている楓が見えた。声をかけようと思い、靴を急いで脱いで上靴に履き替え、楓へ向かって手を振った。大きくブンブン振るのではなく、胸元でフリフリと。すると楓も気づき、ゆっくりと理沙都に近づいて行く。ある程度の距離まできたので、声を出そうと口を開けた瞬間、後ろから何者かがドンっと理沙都の肩を持った。この力強い感覚は…。
「おっはよー、りーちゃん!あ!あなたが楓さんだね!!おはよう!!綺麗な髪だね〜!」
「えっ…ああ、はい。おはようございます…はは…。」
やっぱり芹香だ。朝からこんな事をするのは、芹香しかいない。楓も芹香を見て苦笑いをした。流石に朝からこんなハイテンションな芹香を目の当たりにしたら、誰だってこうなるはずだ。一瞬和香奈の顔が頭に浮かんだが…気のせいだろう。理沙都はブンブンと首を振った。
「ねぇねぇ楓さん!あなたギターやってるんだよね〜??」
ピクッと楓の肩が動き、うつむいた。理沙都も楓の異変に気づき、少し焦った。
「もしよかったら私たちと一緒に………」
「ギターはもうやらないって決めてるの。ごめん。勧誘は嬉しいけど、他の人をあたって。」
芹香が最後まで言う前に楓が断りを入れた。言い終わると楓はプイと背を向け、教室へ歩いていった。断られた芹香は「うーん」とうなりながら前髪をいじっている。そして理沙都に向き合えば、パチンと指を鳴らした。
「りーちゃん。昼休みの時、楓さんの過去を教えてくれないかな〜?」
授業は退屈だった。いつもあんなにも楽しい授業も、なんだかつまらなかった。今までカラフルに見えていた教室が、急にモノクロに見えたような感覚だ。理沙都の頭には、ギターを持って笑顔で演奏する幼い楓の姿が映されていた。あの笑顔は、もう見れないのかな…。そんな事を思い、授業を受けていた。
昼休みとなり、理沙都、芹香、和香奈の三人は、階段の踊り場で話し合っていた。
「えっ、1年でやめちゃったの!?ギターを!?」
驚きを隠せない芹香。「あらあら…」と細目をさらに細める和香奈。
「そう…。中学の時にイジメにあってね…。ギターを…壊されちゃったんだ……。もちろん弁償はしてもらったみたいだけど…楓の心がギターを受け入れることができなかったんだと思う…。ギターを持ったら…またイジメられる…ってね。だからさっき断られちゃったんだよ…。」
三人は黙り込んでしまった。少し静寂が訪れた後、和香奈が口を開いた。
「とりあえず…メンバーを集める事を第一優先事項としましょう?練習はその後。ね?」
人差し指をピンと立ててウィンクした。芹香はコクコクと頷いたが、理沙都は何も反応しなかった。納得いかなかったのだろう。しかし口は開かなかった。授業開始10分前のチャイムが校舎内に響いた。三人はせかせかと自分の教室へと帰っていった。
夕方となり、下校時刻を告げるチャイムが鳴った。理沙都は急いで帰った。理沙都に向かってくる芹香の横を「ごめん、今日は早く帰るの」と言いつつ、通り過ぎた。芹香はキョトンと首をかしげる。
それからというもの、理沙都は家に帰れば急いで宿題を済ませ、ギターケースを背負えば電話をしながら家を出ていった。電車に揺られ、歩いたその先は、この前訪れたライブハウス”Rock River”だった。理沙都は毎晩練習を重ねた。下手くそなら、人一倍努力すればいい。未熟なら、人一倍練習すればいい。そんな思いを抱きながら理沙都はずっと練習を続けた。そんなある日。理沙都は足元がふらつくようになった。しかし、練習をやめることはしなかった。楓だって、葵さんだって…上手くなれば認めてもらえる。バンドに入ってもらえる。約一週間。そんなハードな生活が続いた理沙都は、少し練習をした後、目の前が真っ暗になってしまった………。
腹が立つ。なんでこんな音色を聞かなきゃなんねぇんだよ。俺はただ自由にドラムを叩きたいだけなんだ。そう感じていた葵は、ドラムをひたすら叩いた。しかし、どうあがいてもいい音色が出ない。いいフレーズが思い浮かばない。あの初心者の音色が頭の中にうろついて離れない。どうしてだろう。葵はがっくりと机に倒れた。俺はただひたすら自分の音色を極めたいだけなのに、あいつの音色が邪魔をして離れない。ぼんやりとしていると、ほのかにギターと美しい声が聞こえてくる。この前の初心者だろうか。だが、この前よりも圧倒的に成長している。多分これはNight Roarの楽曲の耳コピだろう。あいつも…自分の音色がわかってきたんだな。そう思った。いつしか、葵は隣の部屋に耳を傾けるようになっていた。日々日々成長する彼女のギターには、何かひかれるものがあったのかもしれない。数日が経過し、今日も葵は隣の部屋に耳を傾ける。今日もギターの音色が聞こえていた。少しずつ、少しずつ、上手になっている。安心したのか、少しドラムを叩き、もう一度耳を傾けてみた。しかし、先程まで聞こえてきていたギターの音色が聞こえない。しっかりと耳を傾けているのに、何も聞こえない。聞こえるのは空気清浄機のブーンと低く唸るような音だけだ。これは流石におかしいと思い、葵は2号室を出て、3号室のドアをノックした。反応がない。少し疑問に思いつつ、ドアを開けた。
「おいお前、ちゃんと………っ!?!?」
葵の顔がドッと青ざめる。そこには気を失って倒れている理沙都の姿があったのだ。葵は持っていたドラムスティックを落としてしまった。静かな部屋にカタン…カコン…という音が響く。葵は急いで、倒れている理沙都に駆け寄った。「大丈夫か!?おいっ!」と理沙都の頭を膝に乗せる。しかし、反応がない。葵はすぐさま理沙都の手首に指を当て、脈を取った。脈はある。気を失っているだけのようだ。葵はポケットに入っていたボールペンを出し、手帳に熱心に何かをサラサラと素早く書き込み、パタンと手帳を閉じれば、スマホで何者かに連絡を取り始めた。
「もしもし。救急車を頼む。ああ。脈はある。反応なし。ひっきりなしに練習していると思うから、立ちすぎと疲労による反射性失神の可能性が高いと思う。ああ。頼んだ。すまん。母さん。」
電話を切れば、理沙都の頬をなでた。
「…絶対助けるからな。もう少しの辛抱だから。」
その目は…今までにないくらい悲し気な目だった。
「それにしてもよくわかったわね。反射性失神だなんて。私だったらすぐにわかるけど…そこまであなたが記憶力があったなんてね。驚きだわ。」
白衣姿の女性が葵に話しかける。どうやら葵の母親は病院の医師らしい。メガネをクイッと上げ、MRI検査の結果を見つめている。
「ああ。俺だって少しは学んでんだよ。っと、それと。脳には異常ないようだな?それならやはり立ちっぱなしが悪かったのか?それと疲労が…。」
「ええ。多分そうね。でもなんでこの子…理沙都?さんが立ちっぱなしだってわかったの?あなた、ドラム叩いてたのよね?わからないはずじゃない?」
ペンをくるくると回しながら母親は葵を見つめた。葵はうつむいたままだ。しかし、だんだん頬が赤くなってきた。母親がニヤリと、少しいやらしい笑みを浮かべた。
「別に…心配だったわけじゃねぇよ…。でも…なんだかひかれるものが……あってだな……って笑うんじゃねぇよ!!!///」
クワっと葵が吠える。腹を抱えて母親は笑っている。「もう俺は帰るからなっ!!!」と言い捨て、葵は診察室から出ていった。あまりの声の大きさに、他の病人の方々が葵に目を向けた。もちろん、受付や、その奥にいた人たちも、だ。赤い顔で葵は病院から出た。なんであいつの音色は…あんなにもひかれるんだ。俺は……なんでドラムをやってんだ…。ストレス発散だとしても…。一緒に奏でる…音がほしい。そう思った葵は、夕日が沈みかけている空を見上げた。綺麗な青色と、淡い橙色が混ざり合い、美しい空を生み出している。ぼんやりと空を見つめ、一つ大きなため息を付けば、葵は家に帰っていった。
「……ちゃん…!!……りーちゃん…!!」
理沙都がゆっくりと目を開けると、そこはベッドの上だった。周りには機械やらなんやらが置かれている。ここは病院だ。ベッドの横で心配そうに理沙都を見つめる芹香と和香奈がいた。
「二人とも………ここは………?」
「私達も今来たばかりなの…。青髪の子がここまで運んでくれたんですって。彼女のお母さん、お医者さんらしくってね。」
青髪の子………葵ちゃんか。理沙都はスマホを取り出せば、「ねぇ、葵ちゃんの電話番号ってわかるかな…?」と和香奈にたずねた。和香奈がスマホのダイヤルをタップし、理沙都に返した。数回コールをすれば、この前の声が「はい、島川です。」と聞こえた。
「あのっ……助けてもらった、花館理沙都といいます…。お…お礼がしたいんですけど……」
すると葵ははぁとため息をつき、面倒くさそうに声を出した。
「礼なんていらねぇ。ただ俺はお前が倒れてたから運んでやっただけだ。それと、俺をバンドに入れたいなら、俺の音色を聞いてからだ。あと一つ。俺は初心者に興味はねぇ。だが、俺の音色を自由に奏でていいのなら、バンドとやらにも入ってやる。」
そう言い捨てれば、葵は電話を切った。電話の声が聞こえたようで、芹香と和香奈は顔をしかめている。
「りーちゃん…明日………行くの…?」
「理沙都ちゃん………。」
二人は心配そうに理沙都を見つめた。理沙都は片手を見つめると、固く握った。
「絶対に………認めてもらうんだ。」
翌日。三人はRock Riverに向かった。カウンターにいるのは、もう友達である智美だ。
「あらあら!今日は三人お揃いなのね!あ、そういえば。あの青髪の子が、2号室に来てくれって言ってたわよ??何か約束事でもしてるの??」
キョトンと首を傾げる智美。どうやら事情は説明していないようだ。三人は智美へ事情を説明すれば、2号室へ向かった。ドアを開けると、そこにはいつも通りドラムのスティックを肩にかけている葵の姿があった。「おせぇぞ」と三人を睨む。
「とりあえず、今から見せっから。ほら、そこ座ってろ。」
そう言って部屋の隅にある椅子を指した。三人は椅子に座り、葵を見つめた。葵はゆっくりとドラムに向き合えば、慣れた手つきで様々な箇所を調整し始めた。その目はさっきまでの威嚇をするような目ではなく、まるで恋人を見つめるかのような優しい視線だった。三人はその目線に気づきながらも、葵を見続けた。葵は少しドラムを見回せば、ドラムスローンに座った。一度目を閉じれば、スティックをバトンのようにくるりと回す。そしてカウントを取れば、激しい音色が部屋中に響いた。バスドラムのドンドンと低く唸るような音や、パシーンというクラッシュシンバルやライドシンバルの音。色鮮やかなハイハットとスネアの連鎖。ストレス発散でドラムを叩いているようには思えないほどの腕だ。体が小さい割には腕力があり、力強い音色を響かせている。芹香は感動のあまりか、腕をフリフリとしてリズムに乗っている。和香奈は目を見開いていた。よほどびっくりしたのだろう。激しい音色だが、どこか優しい音色でもある。不思議な楽器だな。と理沙都は心の中で思った。バッシーンと高らかにクラッシュシンバルが鳴った。どうやら終わったうようだ。葵がふぅと一息つけば、三人に向き直った。
「どうだ。これが俺の実力だ。これを自由に叩いていいって言うならバンドに入って……」
「葵ちゃん…!!ぜひ私達のバンドに入ってほしい!!だめ……かな………。」
葵が言い終わる前に理沙都が葵に駆け寄り、手を取った。理沙都の目は今までにないくらい輝き、勢いがあった。葵は一瞬怯んだが、すぐにブンブンと顔を振り、理沙都の手を払った。
「勘違いするんじゃねぇ…!!俺は初心者には興味ないって言ってんだろ!!ただ俺は自由に叩ける場所と音楽がほしいだけで、一緒に演奏したいだなんて一切思ってねぇんだからな!!少し上手くなったからって調子に乗る、自分の音色も奏でられないお前ら…なん……かに…………………。」
狼のような威嚇。空気がビリビリと震えたが、最後の方はフェードアウトしたようだ。芹香の笑顔が消えていく。和香奈はびっくりしたのか、軽く耳を塞いだ。流石に葵も言い過ぎたと思ったのか、「わっ……わりい……」と片手を上げる。理沙都はうつむいたまま、ボソリと一言告げた。
「まだ初心者で…ごめんなさい…。もう、忘れて…。ごめんなさい……。」
そう言えば、理沙都は涙ぐむ瞳を服の裾で抑え、ライブハウスを飛び出した。葵は手を上げるが、声が出なくなっていた。残りの二人は、力強く開けられ、ゆっくりと戻っていく部屋の扉を見つめる事しかできなかった。
「葵…ちゃん…。理沙都ちゃんに…」
「もう俺に話しかけんな!!俺は………もう……すまねぇ…。」
和香奈の声を断ち切るように大声を上げ、葵も部屋を飛び出してしまった。フロントで準備をしていた智美が、飛び出していく葵を見て「あっ、君!どこに行くの!ねぇってば!!」と叫ぶ。しかし、葵は耳を貸さなかった。葵は街へと走り去って行った。
理沙都は自分の部屋に飛び込めば、日記帳を開いた。そしてサラサラと数文書けば、ギターケースを力強く背負い、家を飛び出した。理沙都の部屋の少し空いた窓から、日記帳をめくるように春風が入り込んだ。小さく入り込む光が日記帳を照らし出す。
『私が未熟なせいだ。自分の考えを通そうと飛び出したくせに、まんまと断られる。これも未熟なせいだよね。私にはそういう力がないのかな。多分そうなんだと思う。私は…反省しようと思う。バンドをやるって勢いで言ったことも。まだ未熟なくせに大口を叩いたこと。全部反省してる。今できることは…あの場所で…歌うこと。もちろん…”自分の音色”で。いつか…葵ちゃんと楓が本当の仲間になってくれることを祈って…………自分の音色を………奏でるんだ。』
♪次回予告♪
今回の担当は俺。島川葵だ。理沙都のやつ…なんで俺なんかをバンドに入れたんだ…?俺はただドラムを叩きたいだけで、バンドに入ったって勝手に叩いちまうぞ?はぁ…ついキツく当たっちまったじゃねぇか…。理沙都はメンタルが弱えからなぁ。あ?”崖の上でギターを弾きながら歌っている女子”がいる…?っおい、ちょっとまて。それって…………
次回「ぜんぶ」
次回も絶対見てくれよな。
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