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彼、泰人と出会ったのは高校を卒業して進学した地元の美容学校だった。
背はさほど高くなかったけどつくりが整ってハッキリとした顔立ちがカッコよくって、なによりも内面の優しさが滲み出るような笑顔に惹かれて好きになった。そして友人関係を経てどちらともなく寄り添うようになって付き合いだした。
確かに彼は優しかった。でもそれは私にだけじゃなかった。
いろんな女の子に優しかった。
気を持たせるような優しさを度々周囲に撒き散らす彼に不安になった私は、耐えきれず彼のスマホを見たこともあった。
『相談があるって言われたんだ』
『ちょっとふたりで話してただけ』
『体の関係なんてあるわけない』
『おれにはかなえだけだよ』
付き合ってた4年の間に何度そんな言葉を言われたんだろう。
『ロックを変えたら後ろめたいことをしてるっていうことの肯定だよね』
そう私が言うと
『後ろめたいことなんて、なにもないから変えないよ』
とも彼は言っていた。
きっと私も麻痺してたんだ。
四六時中傍にいて見張ってるわけでもない。
一緒にいたときも、離れてからも、決定的な場面を見ていなかったから彼の言葉が真実で、スマホの中の出来事はフィクションだって思い込んでたのかもしれない。
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