忘れゆく歴史

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「で、このデカイピンクマ、一体なに様よ」  せっかくの兄弟初対面のお祝いだと、タキも加わり3人で呑み始める。  この分じゃ店、臨時休業になるんじゃないか?花金の夜だってのに。 「それ、真琴ちゃんが生まれた時に買ったんです。あ、ラッピングは新しいのに代えてありますから。それからこっちは…」  両手に下げていた例のデカイ紙袋から、何か別の箱も出て来た。大手おもちゃ店の包装紙だ。他にも沢山の袋やら箱やらが入っている。 「こっちが2歳の誕生日プレゼント。こっちが3歳の、こっちが4歳で。7歳のまで全部あります」  俺とタキが眼を丸くする。あの異様な大荷物の正体…それが全部真琴へのプレゼントだと? 「いつか渡せたら良いなって思ってて。真琴ちゃんの誕生日の度に母と二人で選びました。もう大分大きくなってるだろうから、ぬいぐるみとか子供っぽくて要らないかもしれないけど。もし兄さんが渡してくれるなら」 「自分で渡せばいい」  冬樹の言葉を遮り俺は携帯を取り出した。  俺の可愛い娘があのデカブツを喜ばないワケが無い。なんせあれはクマなんだから!  クマと言えば我が家は親父!親父と言えばクマだ! 「もしもし、あ、俺。真琴まだ寝てないよな?今すぐ車でタキの店に連れて来て」  いきなりな俺の言葉に、静流が疑問符だらけの返事をしている。 「良いから連れてきて!!あったかい格好をさせるの忘れないでな」  携帯を切る。家からここまで10分もあれば着くだろう。 「兄さん、今のって…」 「嫁に真琴を連れて来るように言った」 「ぇえ!?」  冬樹がテンパっている。どうやらこいつは初対面とかいきなりとかに弱そうだ。 「真琴ちゃん来るんですか?ぇえええ!?どうしよ、僕、酒臭くないかな?」  ウロウロと店内を歩き出した冬樹の方が余程クマだった。
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