忘れゆく歴史

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 冬樹が不審なうろつきクマになったまま数分。いきなりにタキの店の前にゴツい四駆が停まる。 「くおぉらバカ息子!!お前何考えとんじゃ!!こんな深夜に可愛い孫娘を外に連れ出せとはっ!!」  いきなり店のドアが開き、青い半天を着たクマの御本尊が降臨。その後ろにはパジャマにモコモコのコートを着た真琴もちゃんと居る。  深夜って…まだ20時前だけど。孫大事のジジバカには深夜か。親父、今日は仕事休みだったっけ。すっかり忘れてたわ。 「あ〜♡大っきいくまさんだぁ♡可愛い〜!!」  親父越しに覗き込んだ店の中に、ピンクのデカクマを発見した真琴がそこに一目散だ。 「パパー!!このくまさん可愛い!!これすごく可愛いい〜!!マコ、この子欲しい〜!!」  それに触れようとした真琴を手で止めた。これは冬樹から直接もらわないと駄目だろう。  俺は親父の登場でフリーズしていた冬樹に目で合図する。  慌てて冬樹がクマに駆け寄る。持ち上げて渡すのにはちょっと大き過ぎるけど。 「え…と、真琴ちゃん」 「うん、そうだよ。おじちゃんは?」  真琴にそう言われ、冬樹が言葉に詰まった。又泣きそうだし。 「マコ、冬樹おじちゃんだよ」  親父が目を見開いて俺を見た。その様子じゃみんな知ってるんだな。 「パパの弟だよ、ご挨拶しなさい」  その時泣き出したのは冬樹と親父と、そしてなぜか俺と。  無言で一生懸命跪き、真琴にクマを沿わせようとする冬樹。余りにボロボロ泣いている冬樹のその状況に怯む事なく、真琴は冬樹の頭をイイコイイコしている。そして更に冬樹が号泣。  よし、娘、グッジョブ。  本当にグッジョブだ……
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