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「でね、これが4歳の時のぬいぐるみ。こっちは5歳のウサギとか色々動物のお人形セット」
「わ~シルバニアファミリーだ。マコ、この子達大好き~♪」
次から次へと開けられるおもちゃの包装紙。真琴はもう、盆と正月がいっぺんに来たモードだ。
「冬樹おじちゃん、ありがとう!全部大事にするね!」
輝かんばかりの真琴の笑顔を見て、冬樹が又泣いた。ありゃキリがないな。というか、冬樹…多分泣き上戸だ。そんな所まで鯉太郎さんに似なくても良いだろうに。
「これで全部か?全く凄いプレゼントの山だな」
プレゼントは誕生日の物だけでは無かった。同じ数のクリスマスプレゼントや正月のお祝いやら。冬樹によるとまだ自宅に保管している物もあるらしい。それを親父が車に運び込む。
「それにしても省吾、お前ズリーぞ。自分たちばっか。俺も明日休みなのに」
自分も冬樹と呑みたかったと言うのだ。仕方ないだろう、全てが急だったんだから。
「ほらマコ、じぃじとお帰りな」
「はーい。冬樹おじちゃん、タキちゃん、おやすみなさい〜」
宝物をいっぱいもらった真琴は上機嫌だ。じぃじに手を引かれ車に乗り込んでいく。あれ?真琴が俺におやすみなさいを言ってくれてない。
「マコ、相変わらずだな」
それに気が付いたタキがクスクスと笑う。ほっとけ、そんなのもう慣れっこだ。
「兄さん」
「うん?」
「ありがとうございます」
うん。
こちらこそ。
「今度は俺んちに来いよ。美人の嫁に会わせてやるからさ」
静流もきっと、この出逢いを喜んでくれるから。
「はい、ぜひお願いします」
そうだ、その時は鯉太郎さんにも声を掛けよう。
鯉さんのお陰で幸せになった俺達二人の酌で、いっぱい酒を呑んでもらおうか。
もちろんその時は、俺の大事な親父も一緒に。
二人の親父に、美味い酒を呑んでもらおう。
「冬樹、大学を卒業したって言ってたな。この先は?もう家業継ぐのか?」
親父と真琴を見送った後、3人で又飲み始めた。あのデカクマが居なくなった分、ボックスがエラく広く感じるな。
「大学で建築を勉強させて貰ったので、暫くは御堂の系列にある設計事務所で経験を積んで、もっと勉強させてもらいます。いずれ家業に携わるにしても、現場もろくにわからないままじゃ困りますからね」
本当にしっかりしてるなぁ、顔だけ見てると高校生みたいに可愛いのに。これもまた冬樹を育てた母親の影響か。
「オニババ…いや、お前の祖母はそれで良いって?」
聞いてどうなる訳でもないが。それでも気になる。
「祖母は僕がやりたいようにやっていいそうですよ。僕の亡くなった父は一級建築士だったから、僕がその仕事に興味を持ったのが嬉しかったと聞きました」
ああ、そうだったんだ。
俺はそんな事すら知らなかったんだな。
「それなら良かった」
本当に冬樹が窮屈に生きてないならそれでいい。
「僕ね、ちょっと野望というか。叶えたい夢みたいのがあって」
冬樹がクスッと笑った。夢?
「いずれ自分で設計事務所持ってそこそこ大きくして。そして、そこの顧問弁護士を境川さんにお願いしたいんですよ」
「あの人、トラック野郎だぞ?」
「もちろんそっちを定年退職したらです。きっとその位の時間は余裕で掛かっちゃいますから」
俺はトラックに乗っていない鯉太郎さんは、ほぼ想像がつかないんだけど。自分が子供の頃、一度弁護士に現役復帰した鯉太郎さんにもの凄く世話になって助けてもらった話は親父から聞かされている。
ああ、それが鯉太郎さんと冬樹との出会いでもあるんだな。
「まだ本当に夢のまた夢ですけどね」
そう言って笑う冬樹が、ショットグラスに入ったウイスキーを照れ隠しのように一気に飲み干す。
「あ、でも僕、今夢を一つ叶えました」
「え?」
「兄さんに僕の夢をこうして聞いてもらうこと、ずっとそれも夢だったんです」
それを聞いた俺も、注いだばかりのショットグラスを一気に飲み干す。なんか照れくさくて。
「ホント、兄弟だねぇ」
タキが笑う。
俺も苦笑する。
冬樹も笑っていた。
弟の夢を語る姿を見るなんてこと、俺の一生にあると思わなかった。
本当に様々な出来事、様々な人との出会いと別れ。その全ては必然であって偶然は無いのだと。
自分が幼い頃から歩んで来た平穏とは言い難い日々の積み重ね。その全てを今、抱き締めたい衝動に駆られる。
奇跡の存在である自分が、今、ここにいたーーー
終わり
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