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美味しいやつです
私の家は貧乏だ。お金というお金が無い。それはもう小学生の時から自覚があった。ウチは貧乏なんだと。お金がないんだと。そう思いながら生きてきた。
今朝も両親は働きに出て私は一人何も食べずに中学校へ向かった。しかし、お腹が減った。とにかくお腹がへったのだ。中学校からはお弁当制になる。購買の学校もあるだろうがウチはお弁当だった。授業が半分終わった頃にはお腹がグーグーなって教室がざわつき始め私がそうだと特定されて恥ずかしかった。
やっと授業が終わって家に帰ってきてお腹が減って倒れてると、帰ってきた母が驚いて言った。
「ユーコ! あんたご飯どうしたの!?」
「どうしたのって何もなかったよ……」
「ちゃんとお弁当入れたでしょう!」
「え……?」
そう言うとカバンの奥深くにお弁当があった。
気がつかなかった。ウチは貧乏だからと思って勝手に諦めていたんだ。
「今温めるからね」
そう言い母は急いでお弁当を温めた。そうしてその温まったホッカホカのおにぎりを一口食べた。
「美味しい……」
人間、究極にお腹がへるとどんなものも美味しく感じるというのは本当の様だ。学校で恥をかいたけどもう恥ずかしくない。明日からは堂々と出せる、美味しい母のお弁当を。
勝手に勘違いしてごめんね、お母さん。
コレは美味しいやつです。
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