突き落とされる

6/6
前へ
/40ページ
次へ
まだ午前中。 家に帰っても何もすることがない。 ユリは近くにあったコーヒーチェーン店に入った。 ホットコーヒーとクッキーを注文して席につく。 先ほどのハローワークとは違い、ここはビジネスマンや学生で溢れていた。 熱心にパソコンを打つスーツ姿の男性。イヤフォンで何かを聞きながら懸命にノートを取る学生服の男の子。恋愛話が止まらない女の子達。お洒落なBGM。 「戻ってきた」 ユリはそう感じる。 注文カウンターから時折聞こえる、「いらっしゃいませー」という挨拶に、半ば親しみを覚えながらコーヒーを味わった。 このままアパートに引き籠ったり、ハローワーク通いをしていたら、自分が廃人になってしまう気がした。 かといって、この歳で実家に頼るつもりもない。 ユリは鞄からスマートフォンを取り出すと、友人の紗英にラインをした。 「突然だけど、仕事やめたよ。暇だからご飯一緒に食べてよ♩」 なるべく文章が暗くならないように気を使い、音符マークをつけて送信する。 「マジ?ついに辞めた??じゃあ今日!!!」 間も無くきた返信に、早いな。しかも今日って。 と思いつつ、紗英のそういう所に感謝しながらユリは集合時間と待ち合わせ場所を打つ。 待ち合わせ時間まで6時間以上もある。 ユリはとりあえず家に帰ることにし、バス停へと向かった。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加