ゲーム ~『星のひかり』#2~

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 やはり、この者たちの問題はなるべくこの者たちで解決させるべきか。  私は多少優秀な人間が生まれやすくなるように初手を打った。じっと見守る。球体の上では時間がどんどん過ぎていった。時の流れは我々の場所と同じではない。だからこそ可能な勝負とも言えるだろう。  どうやら環境汚染に関する研究が少し進み、人間を減らさず、今の生活水準を下げなくとも自然の破壊をいくぶんか食い止めるシステムを作り上げたようだ。  よし、初手としてはまずまずか。大きな成果を上げたいところだが、焦りは禁物だ。  この勝負の難しいところは、どうなっていけば良いかという正解がはっきりしていないところだろう。その時によるといってもよい。例えば、文明が大きく進んでいけば良いのか、それとも人間のような存在は消え、植物が生い茂った方が良いのか、はたまた新たな知的生命体が生み出せれば良いのか。それはその時々で結果は変わる。だから、あまりはっきりとした方向を決めすぎても良くないのだ。そして、方向を決め、手を加えすぎると、さすがに不自然過ぎて人間達も見えざる手の存在を意識してしまう。それは我々としては避けたいところであった。  とはいえ、人間は我々のような存在―――概念とも言えるか―――を創り上げたようだ。そして、彼らはそのような存在を「神」と名付けているようだった。  「お前はどう思う?」  「なにがだ?」  投げかけられた問いに、今度は私も視線を向けずに聞き返す。  「我々は神だと思うか?」  「それはおかしい。我々が創りだした人間が生み出したのが神だ。それでは何が初めかわからなくなる」  「そうか」  「ただ―――」  「ただ?」  「もし、彼等が言うように、彼等の世界を創造していく者を神とするなら、私達は神なのかもしれない」  「なるほど」  しかし、神という呼び名はどうだろうか。神、ゴッド、シェン、デウス、アッラー、ディユ……数々の呼び名はあれど、我々にあてるにはどれもしっくりこない。人間はもっとネーミングセンスがあるはずだ。きっと、実物を見たことがないままに、想像で描いて名を付けたからであろう。  「では、実物さえ知れば、もっと相応しい名が生まれると?」  「ああ」  「お前の好きな『プリン』のように、か?」  「そうだ」  相応しい名か、と向こうが漏らす。  「彼等が私達の姿を見たら、なんと名付けるだろうな」  「おそらく―――」  私は自分たちの姿を見て答える。  「バケモノ」  それを聞いて、相手はくくっと笑い「違いない」とだけ呟いた。
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