ゲーム ~『星のひかり』#2~

4/7

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
 「そうだ」  思いついたように、奴が声を出した。  「なんだ?」  「この勝負に負けた方はプリンを失う、それで良かったな」  「……ああ」  負けた方の作品上からはプリンという存在が失われる。つまり、これまでのようにそこからプリンを取り出せなくなるのだ。なんと忌まわしきルールを呑んでしまったのか……。  「しかし、それだとあまりにもお前にばかりダメージが大きい。私もプリンは好物だが、お前程ではない。我ながら不公平なルールだったと気付いた」  「ほう。では、プリンはやめるか?」  「いや、負けた方はプリン諸共、作品ごと一度破壊することにしよう」  「なっ……!」  「どうだ?これなら公平だろう」  簡単に言ってくれるな。たしかに、我々は破壊することも可能であり、そうなったらまた創り直せばよい。とはいえ、もちろんまた一からとなるので、それなりの労力が要るのだ。  しかし、逆に言えば、もしプリンが失われてしまえば初めからやり直さない限り、プリンとは再会できないとも言える……。  「……わかった、それで良いだろう」  「では、ルール変更だ。負けた方はプリン諸共、作品ごと破壊する」  受けてしまった。もちろん、プリンのこともあるが、コイツからの提案を呑まないのは、逃げているようでそれも癪だった。なんにせよ、いよいよ負けられなくなった。  と、私が再び作品へ視線を向けると新たな変化が起こっていた。  先ほどの一手で良い方向に進んでいたかと思ったが、今度は人間通しの争いが活発になってきていた。何故、人間は今あるもので満足しないのか。知能が発達した人間が増えた結果、もっと多くのモノを求める者も増えてしまった。競い、争い、ねじ伏せ、奪う。それが可能な人間が増えたということか。  くそっ、これでは前回の二の舞になってしまう。これだから人間というやつらは減らしたくなってくるのだ。しかし、そんなことも言ってられない。どうする。この一手は重要だ。勝負に大きく響くと言ってもいいだろう。  こちらの焦りに気付かれないように、そっとあちらの様子を窺う。どうやらこちらの変化には気付いていないようだ。しかし、未だにじっと作品を見つめている。いったい何をしているのだ。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加