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「そうだ」
思いついたように、奴が声を出した。
「なんだ?」
「この勝負に負けた方はプリンを失う、それで良かったな」
「……ああ」
負けた方の作品上からはプリンという存在が失われる。つまり、これまでのようにそこからプリンを取り出せなくなるのだ。なんと忌まわしきルールを呑んでしまったのか……。
「しかし、それだとあまりにもお前にばかりダメージが大きい。私もプリンは好物だが、お前程ではない。我ながら不公平なルールだったと気付いた」
「ほう。では、プリンはやめるか?」
「いや、負けた方はプリン諸共、作品ごと一度破壊することにしよう」
「なっ……!」
「どうだ?これなら公平だろう」
簡単に言ってくれるな。たしかに、我々は破壊することも可能であり、そうなったらまた創り直せばよい。とはいえ、もちろんまた一からとなるので、それなりの労力が要るのだ。
しかし、逆に言えば、もしプリンが失われてしまえば初めからやり直さない限り、プリンとは再会できないとも言える……。
「……わかった、それで良いだろう」
「では、ルール変更だ。負けた方はプリン諸共、作品ごと破壊する」
受けてしまった。もちろん、プリンのこともあるが、コイツからの提案を呑まないのは、逃げているようでそれも癪だった。なんにせよ、いよいよ負けられなくなった。
と、私が再び作品へ視線を向けると新たな変化が起こっていた。
先ほどの一手で良い方向に進んでいたかと思ったが、今度は人間通しの争いが活発になってきていた。何故、人間は今あるもので満足しないのか。知能が発達した人間が増えた結果、もっと多くのモノを求める者も増えてしまった。競い、争い、ねじ伏せ、奪う。それが可能な人間が増えたということか。
くそっ、これでは前回の二の舞になってしまう。これだから人間というやつらは減らしたくなってくるのだ。しかし、そんなことも言ってられない。どうする。この一手は重要だ。勝負に大きく響くと言ってもいいだろう。
こちらの焦りに気付かれないように、そっとあちらの様子を窺う。どうやらこちらの変化には気付いていないようだ。しかし、未だにじっと作品を見つめている。いったい何をしているのだ。
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