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負けるわけにはいかない。
コイツにだけは。
コイツとは昔から何かと競い合い、比べ合うことが多かった。それはまあ仕方のないことかもしれない。見た目も声も同じであれば、そりゃあどこか違いがないかを探すものだ。この点はこちらが優れているのだな。なるほど、ここはこっちが劣っているのだな。そうして比べ合ってきたコイツは、何故か私より優れているところが少しばかり多かった。
悔しい。
それが正直な気持ちだ。
しかし、それは向こうも同じようで、私の方が優れているところが見つかると、とても悔しがった。そのため、私達は何かにつけて勝負をするようになった。
そして、それは今日も始まる。
よりによって、コイツはおやつのプリンを賭けようと言ってきた。プリンは私の大好物だと知っていて。勝負を持ち掛けてきた時のニヤついた顔も気に食わない。
『プリン』。
なんと素晴らしい響きか。味や見た目はもちろんのこと、この名称は他の何よりも優れていると私は考える。
プリン、プディング、ラクレールキャラメル、プディーノ、フラン……様々な呼び名はあれど、私はやはり『プリン』こそが、あの見た目に何よりもマッチしていて相応しいと思っている。人間が生み出したモノとしては、最も誇って良いものだろう。
そのプリンを。この男は、私から奪っていこうと言うのだ。許せぬ。
負けられない。コイツにだけは。
負けるわけにはいかない。プリンのためにも。
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