始まりの時

4/12
前へ
/51ページ
次へ
「灯華ごめん」 「どうした?」 「『禊ぎ』自体は上手く行ったんだけれど、帰りに歳さんに会った」 「見られていたのか?」 「わからないわ、でも、、、」 鋭いあの人の事だ、何か気づいたのだろう 「仕方ないだろ?それに、江戸には長く居すぎた」 灯華が少し寂しげに笑う 「、、、そうね。いつまで自由にしていられるか分からないし」 「千明、京へ行こう」 その日の夜、隣で寝ている灯華は千明が起きたことに気づいてはいないようだ 試衛館の人々と出会い、此処での暮らしが想像以上に心地よかった 生ぬるい生活の中で鈍っていたことは確かだ 1番見られたくない人に本当の自分を見られてしまった これ以上周りを巻き込むわけには行かない 「じゃあまたね、灯華」 小さく呟くと、窓から飛び降りた 起きると隣に千明の姿がない 灯華はため息をつく 「ったく、置いていくなよ」 「どちらへ行かれるのですか?」 たまたま屋敷に来ていた使いの者が驚いた様に灯華を見る 「千明を探しにだよ、まだそう遠くまで行ってないだろう?」 気配を辿ればどうにか追いつけるだろう 「千明様より、これを預かっております」 「なんだ?」 一足先に京へむかうこと、遂行しなければならない任務があること、灯華も京へ向かい指示を待つよう書かれていた。 「なら、尚更一緒に行けばよかっただろ」 文句を言いながらも荷物をまとめる。 「お気をつけて」 「あぁ、世話になった」 灯華は刀を腰に差し、見慣れた江戸の町に別れを告げ、京への道を歩み出す
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加