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「灯華ごめん」
「どうした?」
「『禊ぎ』自体は上手く行ったんだけれど、帰りに歳さんに会った」
「見られていたのか?」
「わからないわ、でも、、、」
鋭いあの人の事だ、何か気づいたのだろう
「仕方ないだろ?それに、江戸には長く居すぎた」
灯華が少し寂しげに笑う
「、、、そうね。いつまで自由にしていられるか分からないし」
「千明、京へ行こう」
その日の夜、隣で寝ている灯華は千明が起きたことに気づいてはいないようだ
試衛館の人々と出会い、此処での暮らしが想像以上に心地よかった
生ぬるい生活の中で鈍っていたことは確かだ
1番見られたくない人に本当の自分を見られてしまった
これ以上周りを巻き込むわけには行かない
「じゃあまたね、灯華」
小さく呟くと、窓から飛び降りた
起きると隣に千明の姿がない
灯華はため息をつく
「ったく、置いていくなよ」
「どちらへ行かれるのですか?」
たまたま屋敷に来ていた使いの者が驚いた様に灯華を見る
「千明を探しにだよ、まだそう遠くまで行ってないだろう?」
気配を辿ればどうにか追いつけるだろう
「千明様より、これを預かっております」
「なんだ?」
一足先に京へむかうこと、遂行しなければならない任務があること、灯華も京へ向かい指示を待つよう書かれていた。
「なら、尚更一緒に行けばよかっただろ」
文句を言いながらも荷物をまとめる。
「お気をつけて」
「あぁ、世話になった」
灯華は刀を腰に差し、見慣れた江戸の町に別れを告げ、京への道を歩み出す
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