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「おかえり晋作、遅かったね、って!?」
宿場に着くや否や出迎えた男が、高杉が女を抱えている事に驚く
「玄瑞の所に運ぼう」
「あぁ」
千明を助けた男、高杉晋作と吉田稔麿は急ぎ奥の部屋に行く
「玄瑞いるか?」
襖を激しく開けると不機嫌に男がこちらを向く、医学の知識のある久坂玄瑞だ
「診せてみろ」
血を流す千明の姿を見るや否や吉田に布団を敷かせ、千明を横たえる
「だいぶ出血しているな、熱もある」
千明の治療を施しながら、玄瑞は呟く
「なぁ晋作、この女は」
治療を施し終えた久坂が横たわった千明のそばに屈みこみ手を見る。
明らかに普段から剣を握っていたことが分かった。
「あぁ、互角にやり合ってた」
人斬りと互角にやり合えるだけの剣術、熱もあったのだ、只者ではないだろう。
「とにかくこの子が起きたら色々聞かなきゃね」
久坂の元に運ぶのが早かったおかげか、さほど心配もないようなので、後を任せ二人は部屋を出た。
「目、覚ましたようだな」
まだ意識がはっきりしない中、千明はゆっくりと体を起こす
「あまり、無理するな、傷が開くぞ」
痛みに顔を歪めた千明に久坂が言う。
「・・・・・・ここは?」
「江戸の旅籠だ」
千明の問いかけに、高杉が答える。
あまり元いた場所から離れては居ないようだ
顔を見ると助けてくれた男だと気づく。
「皆さん、ありがとうございました」
目の前に揃う恩人らに、慌てて背筋を伸ばしお礼を言おうとするも肩に激痛が走る
「無理するなと言ったろ」
久坂が呆れて言う。
「ところでさ、君名前は?」
まだこの男達が誰が分かっていないがひとまず本名を名乗ることにした。
「橘千明です」
「ふーん、千明か、僕は吉田稔麿」
「高杉晋作だ」
壁に持たれた先程の男が名乗る
「俺は久坂玄瑞だ」
相手のことがわかった所で昨晩のことについて高杉が話す
「じゃあ、辻斬りは殺してそのままにしてきたわけ?」
話を聞き終えた吉田が呆れたように高杉を見る
「仕方ないだろ」
「後先考えず行動するからでしょ、馬鹿杉」
「誰が馬鹿杉だ」
何処か懐かしい感じに自然と笑みがこぼれる
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